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茨城の農業・漁業に触れた高校生は、何を発見したのだろう|鎌倉学園・探究学習フィールドワークレポート

8月28日29日の2日間、鎌倉学園の1・2年生が茨城を訪れました。
やってきたのは、探究学習の複数のテーマの中から「茨城の魅力を探し,
PR」を選択した生徒さんたち26名です。
今回の夏のフィールドワークでは、まず茨城がどんな土地なのかを知り、さまざまな魅力に触れ、今年度1年間を通じて探究学習を行っていくテーマを絞るのが目的。
1日目はつくばを中心に科学に触れました。
2日目の今日は、朝からバスに揺られて場所を移します。茨城町で、第一次産業の魅力に触れていただく予定です。
さて、生徒の皆さんはどんな体験をしたのでしょうか。時系列で追いかけていきましょう。

9:10 柳農園 着 トマト収穫を体験

柳さん清水さんたちと📸

本日最初の目的地は、柳農園。メロンとトマトを栽培している農家さんです。
実は茨城県は、メロンの生産量日本一なんです。ご存知でしたか?

柳農園さんでは、
・「オトメメロン」
・茨城県のオリジナル品種であり、メロンの王様「イバラキング」
・あたたかい甘さのオレンジ色の果肉が特徴の「レノンメロン」
という名前の3品種のメロンを栽培。
柳農園さんのイバラキングは、今年の優れた逸品を選抜するための品評会「King of IBARAKING」で、優良賞にあたるブロンズマイスター賞を受賞しています。

今回、鎌倉学園の生徒さんを柳農園へアテンドしたのは、柳さん清水さんが茨城町農家の若手で活躍されている方だから。ぜひ直に話を聴いて、想いに触れ、その熱量を持ち帰ってほしいと思ったのです。
また、鎌倉学園の近隣では体験しがたい、とれたて野菜のおいしさを体感してほしかったことも大きな理由となりました。

バスが農園に到着すると、出迎えてくれたのは柳洸太さんと、清水伊織さん。
生徒さんたちは、手袋と、靴の上からカバーをつけてビニールハウスの中へお邪魔しました。

中に入ると、さすがビニールハウス。熱がこもって独特の空気に身を包まれます。足を進めると、実のついたトマトがいっぱい!生徒さんは、トマトとトマトの間の長い通路を奥へと進みながら、1人1枚受け取ったビニール袋に、赤くなったトマトを収穫していきました。猛暑の中、時間いっぱいまで使って袋いっぱいにトマトをとった子、選び抜いた真っ赤なトマトのみを厳選してきた子、スーパーマーケットでは見ることがないからと、あえて緑色のトマトも持ち帰ることにした子など、収穫時にも個性が垣間見えました。

実はこの日は、農業専門学校の学生さん2名もいらっしゃいました。柳農園での実習最終日ということで、農園のことも分かっている2人が高校生のサポートをしてくれました。各自が収穫したトマトはお土産に持ち帰れるようにと、袋口に機械でテープをするのですが、
・袋の口をねじる
・シーラーにガシャンと通す
が、農業経験がほぼない生徒さんたちには難しかった様子。お兄さんたちに手伝ってもらいながら、無事に袋詰め体験も終えました。

体験後には、柳さん清水さんが生徒さんからの質問に答えてくれました。

育てている野菜を選んだ理由や、トマトが好きではない人へのおすすめの食べ方、収入や施設費などの金銭面など、飾らずに教えてくれたお二人。「実はトマトはそんなに得意じゃない」とこっそり打ち明けてくれる場面も。
短い時間ではありましたが、農家さんの想いに触れていただける時間となったのではないでしょうか。

生徒さんの声

農家をするにあたってどのくらいの資金が必要なのかなど今まで知ることのなかったようなことを知れてよかった

代々家族で受け継いでいたトマト農園があり、そこに新たに技術を学びに来ている学生がおり、受け継ぎ方が変わったと感じた。

トマトは大好物なのでたくさん持って帰ることができるのはとても嬉しかったです。家でも美味しく家族で食べました。他にも農業のやりがいなどの話はとても興味深く勉強になる話でした。

10:30 涸沼 着 漁業の見学&いかだ体験

生徒さんたちは、再びバスに乗り込み今度は涸沼へ。こちらでは、他の学校の生徒さんたちにも多数体験している涸沼ならではの漁業見学と、イカダ体験。場所を移して、涸沼でとれたしじみのお味噌汁をいただきました。

教育旅行に複数回同行させていただいていると、ひろうら田舎暮らし体験推進協議会の清水会長も、茨城町観光ボランティアガイドの別所さんも、訪れる児童・生徒さんの年齢や学校の所在地にあわせてお話をしてくださるのが印象的です。人の熱に触れてほしいと企画している茨城での教育旅行は、地域のみなさんの仕事への姿勢と、おもてなしの心で成り立っていることを実感します。
分かりやすい観光名所がある地域ではないのですが、実は茨城町は、コロナウイルス流行前から田舎体験をインバウンド向けに展開し、海外から人を誘致してきた経緯もあるそう。このおもてなし力には、先生や生徒さんからも驚きの声が漏れていました。

体験内容は、こちらのレポートにも記載しています。あわせてご覧くださいね。

生徒さんの声

茨城の自然に触れることが出来た。しじみ汁が美味しかった。

伝統的な方法で繋がれてきた漁法をこれからも繋いでいかないといけないなと感じた。

昔からの漁の動具はどれも工夫されていて使ってみたくなった。筏体験はみんなで協力すればするほど進むので面白かった。

12:30 ポケットファームどきどき茨城町店 着

さらに移動してやってきたのは、ポケットファームどきどき。こちらでは昼食をとり、晴れ晴れファームの西村智訓さんから講話をいただきました。

農家さんのお話は午前中に柳農園でもいただいていますが、探究学習の種を探しにきた鎌倉学園の生徒さんたちには、別の角度からも農業に触れてほしかったと、鎌倉学園のご旅行担当スタッフ・橋本さんは語ります。西村さんは新規就農で大農業県である茨城県の水戸市に移住してきた方ですが、もともとは神奈川県にお住まいだったとのこと。鎌倉学園の生徒さんたちが少しでも身近に感じてほしい思いでお声掛けしたという経緯があります。

西村さんの農業がユニークなのは、農作物をつくっているだけではないという点です。農家プロジェクトとして水戸市内の15名ほどで活動している農家グループ「水戸の農家たち」を立ち上げ、イベント活動などを行っているといいます。グループを組むなんて、アイドルみたい! 農家グループ、初めて耳にしたワードです。

「水戸の農家たち」が目指しているのは、地域野菜のブランド化。実は生徒さんたちの地元・鎌倉でも神奈川県の鎌倉市や藤沢市周辺で栽培している野菜を指す「鎌倉野菜」という言葉があるそう。これと同じように、「水戸野菜」という名前を広めたい想いです。特定の野菜+地域名としないことで、種類を限定せずに幅広い野菜をブランド化できるというメリットがあります。

他にも、農業関係人口を増やしたいこと、都市農業化を進めたいことなど、農業とそれに関わるすべての人の未来に想いを馳せられるお話をいただきました。

講話のあとは、野菜作りや農業の在り方について、生徒さんたちからの質問に回答しながらの農トーク。

・仕事のやりがい
・無農薬野菜とは
・売れる野菜と売れない野菜の違いと売り方
・新規就農するまでの流れと苦労
・農業を始めるのにかかった初期費用や収入
などなど、生徒さんから出たあらゆる角度の疑問・質問に、西村さんが朗らかに回答してくれました。あらゆる場で質問してきた2日間の最後ともなると、質問の精度もあがるのだなと、質問を次々に挙げる生徒さんたちに驚きながら、一緒に「なるほど・・・」とお話を伺いました。

「『水戸野菜』を覚えて帰ってね」と繰り返して話は閉じられました。生徒さんたち、『水戸野菜』というワードは持ち帰ってくれたでしょうか。

生徒さんの声

農業というと、機材は借りるけど個人で黙々と進めるものだと思ってたので、仲間を作って地域の産業を高めているということを知って、さらに興味を持ちました。

たくさんの努力をされて、自分の好きな道を歩んでいることが印象に残った。

新規での農業を始めたときの話や、他の農家さんと協力して仕事をしていることを聞いて、とても行動力のある方だと思いました。また、農業のリアルな話を聞くことができて勉強になりました。

何事も「楽しむ」ということに重きを置くことで長続きするのではないかと考えさせられた。

15:00 土浦駅で解散

バスを走らせ土浦駅へ。暑い中での外での活動時間も長かったこともあり、男子高校生の皆さんも駅までぐっすり眠っている子がほとんどでした。2日間お疲れさまでした!

バスの中で先生から生徒の皆さんに「今回来てみて、自分の中でも茨城の印象が変わった。2日間で見た科学も農業もそれぞれすごいと思ったけれど、一番は良かったのは人でしたね」とお話されていました。生徒の皆さんの心には、どんなことが残ったでしょう。

今回の旅行では、まずは茨城を知ってもらうことに重きを置きました。今回の体験に基づいて生徒さんたちはさらに深めて調べていきたいテーマを設定し、茨城について探究を進めていきます。冬には再び茨城に来て、今度は各自のテーマに合う場所を探し、訪問する予定です。それぞれの探究がどんな方向に深まっていくのか、楽しみにしています!

1日目のレポートはこちら

鎌倉学園さんの昨年度のフィールドワークレポートはこちら。あわせてご覧ください。



私たち森と未来の学校は、茨城県での教育旅行を通して「子どもたちの学び・体験のアップデート」、「茨城県の社会問題を解決」することを目指しています。
探究の種がたくさんある茨城での「旅」は、日帰りも可能。首都圏のお子さんたちが、これからの変化が多い時代を生き抜く力をつけるのにぴったりな場所です。
茨城を舞台に探究型教育旅行をしようと考えている際は、お気軽にお問い合わせください。

記事:荒川ゆうこ


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