読書記録82 2024年8月の本まとめ

8月は、何があったか忙しかったのか、全然本を読めませんでした。
大学のPJ関係や修論調査で地方へ行っていて、月の1/3は旅行していたので仕方ないかも知れません。

読んだ本が少なかった分、感想の量は倍増です。

1.『映画を早送りで観る人たち』(2022)稲田豊史

Netflixで映画を倍速視聴している人がいることへの違和感から出発し、現代のコンテンツ消費について幅広く取り扱った本。話の展開にまとまりがないと言えばないのだが、その分色々な切り口でテーマを考えることができる。
友達の話に合わせるためにドラマや映画を観たことがないし、LINEで「おすすめの〇〇」の話をするグループがないので、「友達が多い人はこんなに大変なことになっているのか」とやや傍観して読んでいた。Z世代と括られる年齢ではあるが、みんながみんなSNSで大活躍ではないので一括りにされ論じられるのがやや違和感がある(もちろん、筆者も「Z世代だから〇〇」が全員に当てはまるなんて思っていなくて、「分かりやすさ」のために述べているのだと思うが)。色々やることがあって忙しくて倍速視聴してしまうという話はなるほどと思った。人生にもっと余白があればいいのに。

2.『マイナス思考法講座』(2010)ココロ社

津村記久子の『枕元の本棚』で紹介されていて気になった本。ココロ社という出版社なのかと思ったら、個人だった。
根っからのマイナス思考で「こんなクヨクヨ考えてたら病気になっちゃう」と思っていたところにこのカウンター。尤も、この本のマイナス思考は「考えて、改善する(行動する)」という前向きなマイナス思考で、私のような「考えて、考えて、結局動かない」後ろ向きマイナス思考とは全く反対のベクトルだ。確かに「なるようになるさ」と思えるプラス思考も大事なのだけど、慎重に事を進めて着実に改善・訂正して行った方が実のある人生のように思える。

3.『「心のクセ」に気づくには』(2023)村上綾

代官山蔦屋書店のPodcastで「ちくまプリマー新書ってとってもいいんですよ!」と言っていたのを聴いて、気になるタイトルをいくつか予約してみた。この本はいつか本屋さんで見かけて、スマホにメモしていた本だった。
人が物事を捉えるときに無意識に当てはめる公式・認識の癖について、社会心理学の研究を引用しながら丁寧に説明しているのでとても読みやすい。
原因帰属や、公正世界理論、公正推論、ステレオタイプ、偏見、現状肯定と様々なトピックを章ごとに扱っている。ではどうすればそのような「心のクセ」を訂正していけばいいの?ということも最後に述べられているので、気になった人はぜひ読んでほしい。

4.『つながる読書』(2024)小池陽慈

評論家、書評家、学者、予備校講師など様々な人がそれぞれ10代に読んでほしい本をプレゼンする第一部、対談の第二部、それぞれが推した本について別の人がメッセージを送る第三部と、盛りだくさんの構成になっている。第一部で終わらずに、紹介された本についてコメントする第二部、第三部があることによって、ますます読みたくなったり、別の視点が提供されたりする。面白い構成の本だなと思った。
特に印象に残ったのは予備校講師田中陽一さんのプレゼン。「読む」=黙読になったのは結構近代のことで、昔は音読して読み伝えたり、書き写したりして読書をしていた。色々な読み方があって、ますます読書の奥深さを感じた。「10代に推したい本」という副題がついているが、大人も読んで面白い一冊だと思う。

5.『人間関係ってどういう関係?』(2024)平尾昌宏

同じくちくまプリマー新書の菅野仁(2008)『友だち幻想』、石田光規(2022)『「人それぞれ」がさみしい』を読んでいたので、それの延長線上で気になった本。上記2冊に比べて「人間関係」とは何か?という定義を丁寧にしていて面白かった(というかそれだけで1冊なので、非常に丁寧)。人間関係の悩みに応える本というより、「人間関係」と大きく括られる関係性とはどういうふうに分類できるのかという内容で、そういうことに興味がある人にはおすすめしたい。


何冊も読まなくても、じっくり少なめの本と向き合うのもいいなと思った8月でした。

かしこ

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