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Be yourself~立命の記憶Ⅰ~④

◆第2章:お告げ(1)

思えば、この旅行は、ウチの主人の一言がきっかけだった。

保育園のお迎え後、5人家族で帰宅した後、子供の相手をしながら、夕食の準備をしている時に主人が私に、こう告げた。

「そうそう、今日、社内報にKonamiさんが載ってたよ。」
「あ、ホントー?彼女元気かな?今どこにいるんだっけ?」

私と主人とKonamiさんは元々同じ会社で働いていた。
主人が現在の社長と一緒に立ち上げた会社だ。

私は23歳で中途採用で入社。社員数20人程の小さなベンチャー企業だった。
私は入社当時は、不思議ちゃんとか、天然と言われ、社長との面接でも、とんちんかんな事を言ったといつも伝説を話され、面白がられていた。

その当時は、流行の波に乗って、会社はすごいスピードで大きく成長していた。
世は空前のIT企業の上場ブーム。2年後には株式上場。役員連中はウチの主人も含め、皆、証券取引所の鐘を鳴らした。

私は、会社ではそんなに出世はしなかったが、新規事業などの自分の得意な分野を積極的にやりたいと申し出た。
人数が少ない部署のほうが、仕事がやりやすかったからだ。
大人数いる部署では、コミュニケーションが複雑すぎて、うまくいかない事が多かったし、私と合わない人がいるという事もなんとなく知っていた。
自分の部下に言い負かされる事まであった。
自分の立ち上げた部署の人数が増えていくと、また居心地が悪くなっていった。

そんな、私と社内で仲良くなったのがKonamiさんだ。
上場後の社員数100名を超える手前あたりで、中途採用で入社してきた彼女は、話を聞くと、すごい経歴を持った才女だった。
以前は、フランスで宝石商として独立していて、フランス語が堪能。
見た目の美しさもあり、事業を立ち上げる才覚もあり、上品さも兼ね備えた素敵な女性だ。
ご実家も相当なお金持ちなのであろう事は安易に推測できた。
ルイヴィトンやグッチ、シャネルなどの高級ブランドのアイテムを、さりげなく身につけている彼女には、色んな事を教えて貰った。

「あのブランドのサンダルは最高よ。お直しもちゃんとしてくれるし。」
「あのブランドは、ダメだったわ。全然長持ちしないんだもの。」

私は当時26歳だったけど、社内では中堅社員としてそこそこの収入はあった。
ボーナスで高級ブランド品を買えるレベルになっていた私は、洗練された彼女に憧れた。
20代~30代前半くらいの日本人しか居ない社内で、海外在住の経験もある、ハーフのような顔立ちの彼女は、1人だけまったく違う存在だった。

秀でた個性を持っている彼女の事が、私は大好きで、度々昼食を共にし、夜は一緒にお酒を飲んだ。私達は二人共、豪快、酒豪。どちらもタバコを吸うから気兼ねも無かった。
ほどなくして、私は主人と結婚。Konamiさんは結婚式に出席してくれた。

私は、結婚後は、家庭と仕事を両立したい、という希望を出し、会社は私向けの定時で帰れるポジションを用意してくれた。
その部署には、男性しか居なくて、人数が多かった。
しばらくは、なんとか頑張ったものの、やはり心身ともに疲弊してしまって、ほどなくして会社を退職して、専業主婦になったのだった。

その後1回しか、Konamiさんとは会う機会が無かったのは、ずっと心残りだった。
私は、31歳で長男を出産。約半年後に一念発起して、自分の会社を立ち上げたので、その話をKonamiさんとしたかった。

「あー、確か、ベトナムじゃなかったかな?」
「ベトナムのどこ?」
「覚えてないなぁ、どこだったかな。」
「いいなぁー、ベトナム。行ってみたいな。Konamiさんに会いたいなー。」
「行ってくれば?」
「いいの?!」
「いいよ。」
「マジで?」
「マジで。」
「でも、あたしが居ない間、子どもたちの世話と家の事、大丈夫?」
「まぁー、なんとかなるでしょ。」
「本当?!わーぉ、超嬉しい!あ、ウチの両親のどっちかに来てもらうよ。日程合わせてチケット取る!」
「あぁ、そのほうが助かるね。」
「やったー!超嬉しい!ありがとう!愛してる~♪」
「愛してるよ」

こうやって、言葉で言ってくれるところが大好き。
私は、主人に抱きついた。

翌日、会社に着いた私は、早速日程の調整に入った。


えーっと、まずは、Konamiさんがベトナムのどこにいるかだな。
パソコンでSNSのプロフィールを開いた。
あ、ハノイって書いてある。ハノイってそもそもどの辺だ?
googleマップで、ハノイの位置を調べる。
ほほー、とりあえずベトナムの北のほうね。
片道何時間かかるんだろう?
JALのサイトで、マイル数と共に、所要時間を確認する。
ふんふん、5時間くらいね。

せっかくこんなに時間かけて移動するんだから、他にも寄れる国ないかなー?
googleマップに戻る。
他に、東南アジアに住んでる友達いなかったっけ・・・、あ!ニノ!
去年メッセージくれた通り、まだバンコクに居るんなら、寄れるんじゃない?
いきなり行くって言ったら、びっくりするかなー。10年以上経ってるもんなー。
ま、いいや。驚かせちゃおう。

OK。じゃぁ、まずは久しぶりにKonamiさんにメッセンジャーで連絡しようっと。
SNSをPCで開く。
メッセージ画面を開いて、Konamiさんに連絡した。
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2016/09/21 11:05
お久しぶり~!お元気ですか??ウチの主人が社内報でKonamiさんを見かけたと言っていました。
ご活躍されてるようで何よりよ♪ところで、ずっとお会いしてないし、たまには会いたいと思って、
ハノイまで行こうと思っています。w
子供は主人が見ててくれるそうなので、2日くらいは滞在できるかなーと思っていますが、
10月中旬以降でご予定どこか合いませんか~?泊まるところとかもまだ何も決めてないのー。
Konamiさんに会いに行く旅なの~。

Konami
2016/09/21 11:21
おー!久しぶり!んーしかし実は
10月からホーチミンにうつるのだよ…
中旬はちょいバタバタしてるかもだけど、
できるだけ会いたいわー!


2016/09/21 11:23
そうなのね!そしたら、11月にホーチミンに向かおうかしら?
平日よりも土日挟んだほうがいい?

Konami
2016/09/21 12:07
そうね。未定だが11月中旬はサクッと日本かもw


2016/09/21 12:33
あら、そうなんだー。ついでに残りの日程でバンコクに寄って帰ろうかなーとか思ってたりしててね。
11月上旬でちょっと予定考えてみてもいい?

Konami
2016/09/21 13:16
ほーい。おそらく私は11月10-11日は日本にいないといけないので、その前1週間程度はHCM不在かもしれないのだがw
とりま楽しみにおまちしておりますー!


2016/09/21 13:42
わかった~♪うちの実家とも相談して日程考えてみるわ~♪
なんなら、日本でも会えるかしらね♪そしたら東京に来たときに連絡してね!

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うん、場所はベトナムのホーチミンなのね。
よし、じゃぁ、11月上旬で土日を挟むとこはー・・・
ここだ!10月29日(土)と10月30日(日)だな。
もっと長く旅行するとしたら、10月31日(月)、11月1日(火)に滞在して、11月2日(水)に日本に戻るか。
11月3日(木)は祝日だから、家族みんなで過ごせるしちょうどいいね。

この日周辺で、ウチの両親のスケジュールも確保だ。
なるべく長く居てもらえるほうが助かるから、1週間以上がいいな。

私は、母親にすぐに電話をした。

「私、10月アメリカに旅行に行くし、あんたのところに10月11日に泊まりに行くって言ったじゃない。」
「あ!そうだった!忘れてたー・・・。」
「私も忙しいからねぇ。10月中にまた東京に行くのはちょっとねー・・・。ま、アメリカから帰ってから、考えましょうか。まずは、それからね。」

電話を切った。
あぁんもう!ホントは早く決めたいのに!!

スケジュールの決定は、【11日に母親と話せてから】と考えて、私はひたすら仕事の空き時間でホーチミンとバンコクについて調べていた。
もし、母親が来れないとなると困るので、私は、父親のスケジュールを予め空いている事まで確認もしておいた。

その間、私は主人に話をした。

「ねぇ、私、現地に行ったら、不動産の事、ちょっと聞こうと思ってるんだ。」
「なんで?」
「いや、ほら投資したいっていう気持ちもちょっとあるんだけどさ、実は住めないかな、とかも思ってるんだ。」
「えぇ?ベトナムに?」
「うん、まぁ海外ならどこでもいいんだけど、人生って1回しか無いから、やった事無いことにチャレンジしてみたいとは思ってるんだよね。」
「まぁ・・・ね。」
「だってほら、あなた海外事業部でも仕事は出来るじゃない?」
「まぁね・・、でも、海外だよ?住めるの?言葉とかも。」
「うーん、まぁそれが分からないから現地に行って、実際の生活スタイルを見てきたいんだよね。」
「まぁ、俺はどうかな、と思うけどね。」
「まぁ、私も東南アジアはどうなのかなとは思ってるんだけどね、ハハハハ。」

「あ、そんで、ベトナムの近くにタイがあってさ。バンコクで友達が起業してるからそいつにも会って話聞いてくるよ。高校の時の同級生。タイに12年住んでるって。」
「分かった。・・・それ、男?」
「あ、うん。でもすごい真面目な人だから大丈夫、安心して。トップクラスに居たくらいの人だもん。頭いいけど、顔は不細工。超ブス。」
「ふーん。」
「まぁ、ちょっと現地の情報とか色々聞きたくて。仕事の話もしたくてさ。」
「まぁ、いいけど。」
「もー、ホント心配しないで?私、あなたの事、すごい愛してるの知ってるでしょ?」
「うん。」
「愛してるよ。だからホントに心配しなくていいから。」
「分かった。愛してるよ。」

この時点では、私、彼への恋心なんか、まったく無かった。
ただ、主人を安心させたかったから、必要以上に彼を卑下(ひげ)しちゃったけど。

10月11日。

既に旅行の行き先の事で頭がいっぱいの私は、母親が来るのをすっかり忘れていた。
オフィスで相変わらずベトナムとタイの事を調べていると、携帯電話が鳴った。
母からだった。

「今、成田に着いたからねー。」
「あ!ごめん、忘れてた!ウチまでの移動は、バスでも電車でも、分からなかったら調べるからまた連絡してー。」

私、どんな事でも、パソコンで調べるのはとても得意だ。
母親からの電話を切った私は、すぐに、父親に連絡した。

「お父さん?話しておいた東京に来て欲しい話なんだけど、お母さんには今日話するから、今からお父さんのチケット取っちゃうね?」
「あぁーはい、分かりましたー。」

そして、私はすぐに、父用の鹿児島と東京の往復チケットを予約した。
あれ・・・よく考えたら、母親、関係ないじゃん。もっと早く決めちゃっても良かったんじゃない?
まぁ、いいや。お母さんには今日報告だけしよう。

「あ、やばい!もうお迎えの時間だ!」

私は足早にオフィスを出た。

続き→◆第2章:お告げ(2)

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