『サスティナブルなto Earnの3つの条件』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】・Web3ニュース2022.7.26
■X to Earnが持続可能になる3つの条件
X to Earnが長く維持されるために必要なことは3つあると考えています。
1.Earn自体を目的から遠ざけること
2.外貨をEarn原資に組み入れること
3.「X」がゲーム外で直接収益を生み出すこと
これらひとつひとつを考えていきます。
これまでのX to Earnの歴史を振り返りながら必要な要素を探ってみます。
■これまでのブロックチェーンゲームの変遷
Crypto Kitties
NFTをゲームに持ち込んだことがエポックメイキング。
NFTゲームというジャンルを確立した。
Axie Infinity
ゲームキャラNFTに加え、トークンでEarnできる仕組みがエポックメイキング。キャラ対戦要素は従来のいわゆる「ゲーム」で、Play to Earnというジャンルを確立した。
STEPN
歩いて稼げるMove to Earnというブームを巻き起こした。
プレイにNFTを使いトークンでEarnできるという型に、従来型の「ゲーム」以外の日常を当てはめた「X to Earn」の可能性を知らしめた。
■NFTゲーム、X to Earnの全般の仕組み
・初期に高額なNFTアイテムを購入する
・購入したNFTで払った額を少しずつトークンEarnで回収する
・EarnしたトークンをNFTの強化に再投資したくなるよう設計されており、Earnしたトークンが引き出される期間ができるだけ長期化するように仕向けられる
・NFTを追加購入などで増やしたくなる動機付けも組み込まれている
・新規ユーザーの増加数への依存度が高く、新規ユーザーの流入が減るとトークン、NFTともに需要減から価値下落する
■主にSTEPNの経済設計の問題点
・初期のNFT価格が高すぎた
- 最初から価格が高いと下落幅も大きくなる
- NFT1点にかかる期待度が高くなりすぎる(1/10の価格で10倍の数を持つ設計なら1点あたりの価値負担が低い)
- 金持ちの投資家を初期ターゲットにしたため、価格変動や投資効率に過度に敏感なユーザーが多くなりすぎた
・自律的な経済設計にこだわりすぎた
- NFTやトークンの価格は市場経済の仕組みに任せる方針とし、Web3っぽく自律分散型で信頼を得たが、経済規模が小さい中では僅かな人数の取引で大きく価値変動してしまう
- 結果的に直接的な買い支えが必要になった現在、これまでの自律経済でやってきた方針と齟齬があるように見える
・歩いてEarnできるGSTも上場させた
- 自律経済へのこだわりから、歩いてEarnでき無限に発行されるGSTも上場させ、価格決定を市場に任せた
- 無限に発行される仕組みなのに、ユーザーが増えユーザーがシューズを強化することでGSTの生成量が二次曲線的に増えるゲーム性と組み合わせたため、確実に価格下落が起きる構造だった
・シューズMintの自由化でNFTが増え続ける設計だった
- これも自律経済へのこだわりから、ユーザーが自由にシューズをMintで増やすことができ、STEPN全体でのシューズの数が増え価値が希薄化する設計とした
- 新規ユーザーが増え、既存ユーザーが買い増す間はシューズNFTの価値が維持されるが、新規ユーザー増も既存ユーザー需要も上限が必ずあるため、構造上確実に崩壊する仕組みだった
・対策の仕方が間接的かつ遅い
- 構造上の欠陥を修正するための打ち手をゲームルールの変更とし、あくまでも直接介入はしない自律経済にこだわったため、最初シンプルだったゲーム性がどんどん複雑になっていった(歩いてEarn→Luck・MBでGem売却Earn→HP導入でシューズ使い捨て化)
- 後出しジャンケンのようにゲームルール、稼ぎ方のルールが変わっていき、初期ルールで制作したシューズが無駄になる状態に陥らせた
- ゲームルールの変更という間接介入であるため効果が出るまでに時間がかかる
■STEPNの反省を踏まえたサスティナブルな設計のポイント
1.Earn自体を目的から遠ざけること
2.外貨をEarn原資に組み入れること
3.「X」がゲーム外で直接収益を生み出すこと
1.Earn自体を目的から遠ざけること
- Earnが主目的になるユーザーターゲット設定をしない
生粋の投資家が集まる構造だと、短期で売り逃げるつもり満々、かつ動かす金額が大きく全体に与える影響が大きい
- Earnには役立たないが楽しみや自慢につながる課金要素を導入する
Earn主目的のユーザーはEarnに無関係な課金は一切しないため、先述のターゲット設定とセットで
- コミュニティの中での承認欲求など人とのつながりの中で継続される構造を目指す
- 歩く習慣や健康実感など「X」の効果や楽しみがあればEarn額に固執しない本質的な価値を追求する
2.外貨をEarn原資に組み入れること
- 初期の高額なNFT購入資金だけを原資にすると新規流入が減った時点で終わる
- 既存ユーザー課金に原資を依存するとEarn主目的ユーザーが増え課金額が伸びないと終わる
- ユーザー課金以外の外貨をEarn原資に組み入れることでユーザー間の資金の奪い合い構造から脱する
- 外貨には広告主が想定されるが、広告主の目的にかなう宣伝効果と、ユーザーを増やすマーケティングが両立できることが望ましい
3.「X」がゲーム外で直接収益を生み出すこと
- 当初Move to EarnやSleep to Earnなど稼げるわけないものを「X」に代入する意外性が耳目を集めたが、本質的には「X」自体で外貨を稼ぎだすことができれば持続可能にしやすい。
- 個人単位では「X」を現金化することがしづらく、サービス全体でマネタイズできる構造
・ビッグデータ販売(Sleep to Earnの睡眠データ、WeatherXMの気象センサー設置など)
・YouTubeの動画制作のようなクリエイティブコンテンツのマネタイズプラットフォーム
・会社で社員の労働をマネタイズする仕組みなど
STEPNは総じて「Web3であること自体を目指したために、Web2以前の良いところも含めて全否定してしまった」ことが短期の経済崩壊を引き起こしてしまう原因になっていると考えています。
これら要点を踏まえたNext STEPNはもしかすると一見つまらない、古臭いものに見えるかもしれません。莫大なEarnはできないかもしれません。
しかしWeb3は目的ではなく手段であるべきです。X to EarnはWeb3ならではの面白い構造を提示しましたが、短期で崩壊しては元も子もありません。
持続可能な、できるだけ長続きする、でも面白くやる気も続くようなWeb3サービスのあるべき姿を探求していきたいと思います。
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