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『スターバックス オデッセイは次世代のSocialFiのモデルケースになる』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.9.14

■スターバックスのNFTプロジェクト「スターバックス オデッセイ」始動

スタバがNFTに参入です。

と敢えてめちゃくちゃ簡素に書き始めてみましたが、さてスターバックスはNFT・web3をどのように使おうとしているのでしょうか?

非ネット企業がNFTをどのように使っていけばいいのか」に悩んでいる方にとってスタバの活用方法はものすごく参考になると思います。

ひとつひとつポイントを確認してみましょう。


■スターバックス オデッセイの仕組み

スターバックス・オデッセイは、ビバレッジやフードを買うたびにスターが集まるプログラム『スターバックス リワード』のメンバーとスターバックス従業員(米国)を対象にしたWeb3プロジェクトで、対象ユーザーはデジタルスタンプ(NFT)の獲得や購入が可能となります。

既存の「スターバックス リワード」を拡張したもの

・リワードメンバー=一般顧客と従業員(米国)が対象
・対象者が「NFT」を獲得したり購入することが可能

「スターバックス リワード」の仕組み

・54円(税込)で1 Starが貯まる。
・250 Star集めるとGreen会員からGold会員に昇格する。
・Gold会員になったあとは150 Starごとに金券がもらえる。
・1年以内にGoldに昇格しないとゼロリセットされる。
・1年間に250 Star獲得し続けないと降格する。

簡単に言うと、スターバックスでたくさんお金を使うと割引チケットがもらえるという制度です。

リワード会員と従業員(米国)はデジタルスタンプ(NFT)の獲得や購入が可能

リワード会員はサイトログイン後「ジャーニー」と呼ばれるコーヒーやスターバックスに関するゲームやチャレンジを完了することでデジタルスタンプNFTが獲得可能。NFTはウェブアプリに組み込まれたマーケットプレイス上でクレジットカードにて購入できます。

ここからが本題です。以下は今発表されている計画で、開始はもう少し先です。

リワード会員(Green会員、Gold会員)はWeb上でログインします。
インタラクティブゲームをプレイしたり、コーヒーやスターバックスに関する知識を深めるアクティビティ「Journey」というチュートリアルを完了させることで「Journeyスタンプ」というNFTをもらうことができます。

チュートリアルクリアで無料版NFTがもらえるというかたちです。Free to Play。
加えて有料版NFTも別途販売されます。

スターバックス オデッセイ内に用意されるマーケットプレイスでは限定版JourneyスタンプのNFTを購入可能になる予定です。購入にあたって仮想通貨やウォレットは不要です。

限定版NFTにはレアリティが設定されている

これまでの「スターバックス リワード」ではGreen会員とGold会員の2段階の設定で、かつGold会員になるためには(コーヒー豆などをまとめ買いせず飲食だけで貯めるなら)一定の期間がかかります。

スターバックス オデッセイでは高レアリティのNFTをマーケットプレイスで買ってしまえばすぐに高ランク会員になれます。

to Earnではなくファンが一番喜ぶ体験を提供

飲食や買い物でポイントを貯めることは「リワード」も「オデッセイ」も同じですが、貯めたポイントの使途の方向性がかなり違います。

「リワード」で貯めたStarは割引券に交換できます。体験価値としては「お得」。即物的で少し味気ない感じがします。

「オデッセイ」で貯めたポイントは

バーチャルなエスプレッソマティーニ作り教室
ユニークな商品やアーティストとのコラボレーションへのアクセス
スターバックス リザーブ ロースターの限定イベントへの招待
コスタリカのスターバックス ハシエンダ アルサシア コーヒー農園への旅行 など

と、スターバックスを好きな人がさらに好きになる体験に対して使うことができる設定です。

NFTを購入してポイント・トークンを獲得する、というのはGameFiの構造と同じですが、ファンをよりファン化させる、ファンが一番喜ぶ特別な体験を提供する、という設定は「to Earn」の発想とは一線を画しています。

ファンがスターバックスブランドの価値を高める

「スターバックスは、家庭と職場の間にある、コーヒーを通じた温かいつながり、コミュニティ、帰属意識を感じられる場所、サードプレイスとしての役割を常に担ってきました。スターバックス オデッセイは、このサードプレイスとのつながりをデジタルの世界にも広げていきます。

Web3 技術を活用することで、会員はこれまで不可能であった体験や所有権にアクセスすることが可能になります。Starbucks Odyssey は、Starbucks Rewards の会員が愛するようになった基本的な特典を超越し、スターバックス独自のデジタル、物理的、体験的な特典を開放します」

稼げるから高額なNFTを初期投資して、ゲームルールをこなしてto Earn。稼げるだけ稼いで、儲からなくなったら撤退して次。

というカタチになってしまいがちなGameFiをそのまま持ち込むのではなく、スターバックスファンが一番喜ぶこと、スターバックスが愛される由縁、ブランドの価値をきちんと検証してweb3・NFTの使い方に落とし込んでいるところが素晴らしいと感じます。

スターバックスに共感する人がNFTを高額でも買い、毎日のように飲食し、周りに価値観を広めてくれる本質的で共感的なインフルエンサーになっていく。そのストーリーを加速させる装置としてスターバックス オデッセイが位置付けられています。

■これからのSocialFiは to Earnではないかもしれない

スターバックス オデッセイはNFTを買っても儲かりません。
ゲーミフィケーション要素はありますが、リターンされる返礼は金銭には代えられないものが設定されています。

それでもNFTは一定売れるのだと思います。そしてNFTホルダーはこれまで以上にスターバックスでお金を使い、友人を誘ってファンを広げるのだと思います。

米国限定ですが従業員が別枠でスターバックス オデッセイの参加者として設定されているのも興味深いところです。従業員に最もスターバックスを愛してほしい。スターバックスを愛している従業員に接客されたい。そんな関係を構築したいと考えているのでしょう。

従業員は本来お金を稼ぐために働いているわけですが、NFTを買うというお金を払う側にもなります。そこまでの帰属意識が高い従業員がいるお店とお客さんはとても幸せでしょう。

スターバックス オデッセイは広い意味でSocialFiですが、to Earnを提供せずにファンとの関係を強固にすることを目指しています。

スターバックスはブランドのビジョン・哲学がすでにあったのでやりやすかった面はありますし、ブランドが強固になることが売り上げにつながるというマネタイズポイントが出来上がっているのでNFT自体で稼ぐ必要がないということも今回のオデッセイの設計を実現できた要因と言えます。

しかし、新規のweb3プロジェクト・NFTプロジェクトもビジョン・哲学の共感性で人を吸引するのは同じ。「稼げる」で人を集めるのではなく徹底的なビジョンの力でファンを集められればプロジェクトは強力な推進力を持つはずです。

スターバックス オデッセイは「https://waitlist.starbucks.com/」で順番待ちリストに登録すると、2022年内に順次、招待状が送られてくる予定です。


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