『Animocaは「メタ国家」と定義。web3とWeb3.0は何が違う?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.11.1
■Animoca Brands、サウジのスマートシティ「NEOM」から5000万ドル出資の提案
Web3の特区を作る。
世界中どの国でもWeb3に関しては法規制や法の未整備がたくさんある現状、実験的に何でもやれる場所で課題を洗い出したり普及を促進することは重要です。
とても興味深い特区実験ではあるものの、web3が志向することをすべて叶えると無法地帯になりやしないか?と感じる方も多いのではないでしょうか。
自由に投機的証券や「お金」を国家の信用なしでトークンで発行できる。自由な代わりに自己責任。著作権もすべてフリー。既存の国家を横断した別のユニバース。アナーキズム=無政府主義。
もしこれがweb3の目指す理想だとしたら、これを国家が管理する特区とはいえ現実の街として構築したら何が起きるんでしょうか?
かたや、web3はブロックチェーン技術で社会課題を解決できるものだと考える人も多くいます。大企業が「ウェブスリー」に取り組もうとするときに考えるのはこちらのほうで、私はこちらをWeb1.0~Web2.0の系譜の進化系としての「Web3.0」だと考えています。
同じ「ウェブスリー」という言葉でも、目指すゴールが違う派閥があるように感じています。今回は「ウェブスリー」を改めて分類整理します。
web3派とWeb3.0派
ブロックチェーン技術を使ったものが広く「ウェブスリー」だと捉えられますが、「web3派」と「Web3.0派」がいます。
完全に分かれるものではなく重なる部分もありますが、目指す方向性やゴールが違います。
同じ「ウェブスリー」のことを話しているのに話が嚙み合わないことがよく起きていました。これはweb3とWeb3.0のどちらのことを言っているのかがずれていることが原因です。
web3=Virtual World
Web3.0=Real World
これが私の「ウェブスリー」に関する大まかな大きな捉え方です。
昨年2022年4月1日に刊行されたWIRED誌 Vol.44「Web3」特集はweb3=Virtual Worldが来ることを夢見たオピニオンで書かれていると今読むと感じます。
昨年春、現実世界への絶望と、Web3・クリプトエコノミーやメタバースに多くの人がフロンティアの魅力を感じていました。しかし今年に入りクリプトウィンターに突入しました。Virtual Worldは多くの人にとっては怖い場所に映ったのか、MetaMaskの利用者数が全世界の人口の0.4%の3000万人に留まるなど、完全な別世界の通貨やルールはなかなか浸透しませんでした。
web3は「メタ国家」とAnimoca定義
今回のNEOMプロジェクトに際し、「メタ国家」を作るとアニモカブランズのYat Siu会長はコメントを寄せています。
Yat Siu会長がいう「メタ国家」はデジタル上の別世界をつくる発想です。既存の国家国境の概念が通用しない別のルールの国が新たに作られるという発想で、これが「web3派」の目指す方向性だと私は分類しています。
デジタル上の新たな国ですから、法律は既存国家とは別です。通貨も別です。
デジタル上の存在なので、所有権を表現するためにNFTが必要です。
メタ国家を作るという目的から考えると、暗号資産やNFT、メタバースというものが理解しやすくなります。
これまでのweb3投資はこちら側に資金が集まっていましたが、近年急速に冷え込んでしまいました。
Web3.0は現実世界の課題をブロックチェーンで解決
対して、「Web3.0派」はブロックチェーン技術を使って現実世界の課題を解決しようとすることを目指すのだと私は考えています。
RWA(Real World Assets)NFT、つまり現実世界の裏付け資産があるNFTはその代表です。現実世界の資産の流動性や透明性を高めるのがRWA NFTです。
また、たとえば電子書籍をNFT化することで「本の所有権」を個人に持たせる試みも、AmazonのKindle本を大量購入したけれどAmazonアカウントをBANされたら全部読めなくなる中央集権の課題に注目し、解決策に現実世界の所有権という概念をトークン化で表現しようとしているという点においては軸足は現実世界にあり、Web3.0だと言えます。
同じ課題をweb3の場合は著作権フリー化、CC0化しようとすることが多いように感じます。国家や法律など既存のルールから離れようとする指向性です。
Web3.0系のウェブスリーには、RWA NFTやステーブルコイン関連など現実に根差したタイプのサービスが多く、これから大きな投資が集まるだろうと見ています。
メタバースもRealとVirtualの2派
昨年メタバースがブームだった時も、web3メタバースというメタ国家を目指すものと、SNSの3D VR版である現実世界のデジタル版の2派がありました。
これを全部まとめて「メタバース」と呼んでいたのでややこしかったのですが、どちらともVR技術の限界や土地・場所を用意するだけでコンテンツがないつまらなさなどから下火になりました。
また、四六時中ゴーグルをつけて過ごしたいわけではない、というのはVirtualなメタ国家としてのメタバースへの移住に対する多くの人の正直な感想でした。
かたや、ゲームも含むReal軸のVRメタバースは、ゲーム的にその時だけ楽しむのには適していますし、3Dに限らず古くからあるビデオゲームが既に体現しています。ゲームが市場として成立しているのですから、VRゲームも普及する可能性はあります。
しかし、ゲームやSNSひとつで社会が変革するようなインパクトを与えることはもともと難しく、VRゴーグルがスマホ並みに普及しなければTikTokは生まれない、と改めて気づかされました。
キャンペーンでの一時的な利用や産業用デジタルツインでは今でも十分に使途がありますので、デバイスの進化と普及次第です。
最近ではReal World派が優勢か
昨年までは「ウェブスリー」はメタ国家的発想の「web3」が活況でした。しかし、アナーキズム=無政府主義は多くの人には受け入れにくかったようで、最近ではRWA(Real World Assets)をはじめとする現実世界に根差した課題解決型のアプローチのほうに注目が集まっていると感じます。
Web2.5などとweb3派から揶揄されることもあるWeb3.0陣営は、地に足のついた課題解決アプローチでより多くの人にブロックチェーン技術を普及させていくのではないかと見ています。
「NEOM」はメタ国家としたアニモカブランズですが、大きなトレンドとしてReal Worldと接続するWeb3.0の要素を取り込んでいくのか、それとも冷え込んだweb3の回復を感じさせるようななVirtual Worldを作っていくのか。それが現実の街に構築された時にどうなるのか。ユートピアなのかディストピアなのか。せっかくなので大きく振り切った実験を見てみたいです。
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