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『GOTOキャンペーンのweb3化、行政運営のブロックチェーン化の未来』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.10.6

■「いざ、神奈川!」 神奈川県が割引キャンペーン「全国旅行支援」

神奈川県は10月3日、新型コロナウイルス感染症により落ち込んだ神奈川県内の観光需要の喚起を促すため、割引キャンペーン「いざ、神奈川!」を開始すると発表した。(ヨコハマ経済新聞)

旅行に対する割引を行うとともに、県内の飲食店や土産物店等で利用できるクーポンの付与を実施する。事業の実施に向け、対象となる旅行商品を取り扱う事業者とクーポンを利用できる店舗を募集する。

自治体が財政を持つカタチでの、旅行や観光全般を助成するキャンペーンは昔から多く実施されていますよね。

今回はこのキャンペーンに参加する事業者の募集のニュースです。一般消費者の立場だと事業者が決まった後に知ることが多いのでちょっと意外なタイミングで報道された印象があります。

こういうよく行われる助成金を使ったキャンペーンをweb3化できないか、思考実験してみます。

思考実験なので、ずっとずっと未来にいろんなものが揃ったらできる、今じゃないものが多数含まれることをあらかじめご了承ください。web4とかweb6とかいう時代のことかもしれません。


■適格審査をDIDで自動化

事業者からの応募はWebでの申し込みフォームになっていればマシ、まだ書類提出での受付もあるんじゃないかと思います。(今回の神奈川県がどうしているかは知らないです。)「電子申し込み」なんてわざわざ言わなきゃいけないのが現状。

でも未来のあるべき手続きは「DID接続してウォレットの開示許可をしたら終わり」です。

DIDは「マイナンバーのブロックチェーン版」のようなものですが、発行者が国など権威団体ではなくトラストレスで分散型なシステムが発行するもの、というイメージが想定されており、社会実装されるのは結構先の未来(すぐには難しい)だろうと予想しています。

今だと事業者が行政に申し込み後、適格性の審査があるはずです。
フォームや申込用紙に書かれている内容から事業者が本当に存在するか、どんな業者なのか、過去に悪いことをしていないか、などを県の職員さんが調べて判断しているのだと思います。

でもこの手続きは未来ではほぼ自動化されるでしょう。

すべての法人はDIDを持ちます。そしてDIDに紐づけてブロックチェーンに刻まれている情報~どんな法人なのか、実在するか、納税しているか、過去に処分歴などないかなど公式な情報はもちろん、一般消費者からの悪評が多くないか、愛されているかなどを参照することで審査します。

申し込みをした法人はDIDのうち適格審査のために参照すべき項目へのアクセスを許可しておき、DID接続をするだけで申し込み完了です。書類やフォームに書きこむ作業は一切不要です。

審査は瞬時・自動的に行われ、問題なければ合格。不明点や疑義があれば初めて県職員が調査に動きます。


■キャンペーン実施後の助成金申請も自動化

いざ審査合格しキャンペーン期間がスタートします。

キャンペーンを利用したい一般客は、今だと事前の申し込みをしたり事後に還付金を申請するなど手続きが必要な場合もかあります。以前やっていた「GO TOトラベル」キャンペーンも手続きが必要でした。

未来はキャンペーン利用者もDID接続するだけで諸手続きが完了です。事前申し込みが必要なケースでは事前にDID接続。店頭で割引を受ける場合もDID接続だけで自動的に割引額での支払いが完了します。

事業者側も、あとから販売分を県に申告して割引分の還付を受ける事務作業が不要になります。利用した・利用された分について、県が持つ予算のお財布=トレジャリーウォレットから自動的に支払われるだけです。

キャンペーンの総予算が決まっていて「予算がなくなり次第終了」というものでも、トレジャリーウォレットがカラになったら自動終了です。

予算を追加する場合も県の財政予算が入ったトレジャリーウォレットから、議会の承認を得ると自動的にキャンペーン用トレジャリーウォレットに資金が移動します。議会の承認なしでは資金移動は実行されず、エビデンスがきちんと残るかたちで予算が執行されます。


■キャンペーンの監査も効果測定も自動化

キャンペーンのトレジャリーウォレットから自動的に割引助成金が支払われていくため、その支払いログがすべてブロックチェーン上に記録されています。

パブリックチェーンの記録なので第三者が自由に監査することができます。不正な使い方や支払先がないかを常に誰かが監視している状況ですから、不正に対する強い抑止力が働きます。

また、いつ・どこで・だれが・なにに・いくら使ったのかがすべてブロックチェーンに記録されているため、キャンペーンの効果測定のための集計がほぼ自動化されます。だれが=個人情報は統計データでは見えなくしますが、たくさん使われた店舗、時間帯、場所、金額帯など知りたいことはリアルタイムに統計化されます。

次回以降のキャンペーン設計ではこのデータをもとにブラッシュアップできます。


■お店や商店街が行うキャンペーンも同じやり方で自動化

国や自治体だけではなく、お店や商店街でも上記と同じやり方でキャンペーンをほぼ自動化できます。

こういう横浜中華街がプレミアム付き商品券を1600人限定で発売する、みたいなことも自動化できますし、さらに「人によってプレミアム率を変える」「上顧客には先行販売権を与える」ということも自動化できるようになります。

民間がやるキャンペーンで適格審査が不要なキャンペーンであればもっとライトにできますし、過去の来店客に再度案内をしたりすることもDIDを通じたメッセージサービスで行えるようになるでしょう。属性や履歴だけ参照して個人を特定する必要がないDIDメッセージサービスは今後作られるはずです。

事務手続きが面倒なキャンペーンはweb3によってスリムでローコスト、そして迅速で的確で透明に行えるようになるはずです。


■行政のスリム化・透明化はブロックチェーンと相性がいい

今の技術でもかなり近いことまではできると思いますが、特定業者の提供するソリューションを使うことになりますし、業者選定の手続きにもまた事務手続きが付いて回ります。

行政手続きの基本である文書主義は、実は自動化と相性が良いものです。手続き手順が決まっていて曖昧さがないからです。(実際は担当者の裁量など曖昧な部分がままありますが。)

これにブロックチェーンの透明性やスマートコントラクトでの自動化を組み合わせると、かなりスリムな行政運営ができるようになるはずです。

割引や還付金など「お得」を実現するのに高額な事務コストを払う矛盾は多くの人が問題視していることでもあります。電子化で自動化されるのは皆が期待していることですが、これにブロックチェーンの透明性を組み合わせると「理想的な」行政ができあがります。

その透明性を望まない人がもしいるとしたらブロックチェーンの導入は避けられ遅れますね、と皮肉を言いたくなりますが(笑)未来は今回ご紹介したキャンペーンのかたち、行政運営のかたちになるだろうと思います。

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