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『web3マスアダプション実現には「わかっている人相手のサービス」に留めちゃいけない』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.12.20

■仮想通貨の自己保管、99%の人には難しい=バイナンスCEO「最終的にそれを失うことになる」

バイナンスのチャンポン・ジャオCEO(通称CZ)は、仮想通貨のセルフカストディについてコミュニティに注意を促し、仮想通貨のセルフカストディを選択する人の99%は何らかの形で失う可能性が高いと主張している。

CZは何年も前からセルフカストディを支持し、そのことを「基本的人権」とまで言っているが、常にユーザーに「正しく行うこと」を勧めている。

web3のマスアダプションを目指している私としてはウォレットは非常に悩ましい問題です。

バイナンスのCZ氏が言う「セルフカストディウォレットは99%の人には難しい」という考え方に個人的には近いのですが、CZ氏が「基本的人権」と表現する通りweb3の根幹の考え方としての非中央集権化も理解します。

非常に悩ましい、と枕詞を付けた上でですが、やはりウォレットが何らかのかたちで進化しないとweb3は一般普及・キャズム越え・マスアダプションは難しいのではないかと考えています。


■仮想通貨のセルフカストディを選択する人の99%は何らかの形で失う可能性が高い

その通りだと思いつつ、もっと悪い状況だと思っています。

つまり、セルフカストディウォレットだと「最終的に失ってしまう」のではなく「始められない」だと思うのです。

多く見積もってもキャズムの手前、16%未満の人しかセルフカストディウォレットをピュアに使ったweb3サービスは利用開始できないんじゃないかと思っています。

非中央集権化の重要性やそれが適した環境、中央集権であることの問題点と解消策としてのセルフカストディウォレット、というニーズがあることは理解しつつも、

・多くのユーザーが「始められない」のが実情。
・始められてもわかりづらい。安全に運用できない。
・サービス運営会社目線だとユーザーから「パスワード忘れた」の問い合わせに救済措置を出せた方が安心感を与えられユーザー獲得しやすい。
・CZ氏の言う「亡くなったら遺族が資産を取り出す方法がなく、多くの人が相続時の対策をしていない」は大きな問題。

は現実としてあります。

なにしろ「始められる」人を増やし普及させないとweb3は「時代」にならないことを危惧しています。


■メジャーサービスがウォレット管理をやるのが現実ライン?

上記2つの記事でも書きましたが、多くのユーザーが使っているサービス内に外部接続可能なウォレット機能を提供するようになるのがweb3的サービスが一般普及する現実的なラインなんじゃないかと予想しています。

またコンシューマ向けweb3サービスを開発し提供する場合、上記のようなメジャーサービス内のウォレットが普及するまでの期間はサービス自体が独自ウォレットを持つSTEPNのような垂直統合式の方が多くの人に「使いやすい・始めやすい」と思ってもらえるものになるだろうとも思います。

MetaMaskを自己管理で作成・運用できる人はごくわずか。ウォレット内のチェーンの切り替えができる人や無数にあるチェーンネイティブトークンを理解して使い分けられる人もごくわずかだと思います。


■問い合わせでの改善に耐えられない

Webサービスを運営していると、さまざまなユーザーから全然想定していなかった質問が飛んできます。運営からすると「そこにひっかかるかー」ということも数多く、頑張ってしらみつぶしに質問が出なくなるまで改善し続けても、終わりのないナナメウエからの質問が飛び交うのです。

MetaMaskやOpenSea、暗号資産取引所、ましてDeFiなどはおっちゃんおばちゃんの質問の洗礼を浴びていません。もっと想定ターゲットを幅広く取ったうえで、その幅広い層の問い合わせに耐えられるUXが必要です。

老若男女だれでもweb3的サービスを使える、今のアカウント作成と同じようにウォレット接続で使える、を実現できるようにするには、ID/PW忘れを運営側が対応できる現状のやり方の方がベターだと考えるユーザー層は若年層でも高齢層でも多いと思います。

Z世代に流行ったサービスが他世代に波及する流れを鑑みても、「Z世代ならウォレットをきちんと管理できる」とは言えません。


■クリプトネイティブ相手だけの方が楽だけど

web3サービスはクリプトネイティブと呼ばれる「わかってる人」だけに留めちゃいけないと思うのです。

でも万人向けは難しいんです。言葉も感覚も通じないし、価値観も文化も違うのでコミュニケーションが取れない。ユーザーの不勉強のせいにする方が楽なんですが、それだとweb3に限らずどんなサービスでも普及しないです。

純度の高いweb3プロジェクトの方がやっていて楽しいでしょう。フルオンチェーンや完全な非中央集権化を目指したプロジェクトの方がクリプトネイティブな人にもウケがいいでしょう。web2.5と揶揄されることもありませんし、Web2派・web3懐疑派の人との喧嘩も極力避けられます。


■web3のマスアダプションを実現したい

何をもってweb3とするのかにも依りますが、個人的にもweb3のマスアダプションを目指すこと、web3を広めることが関心事です。そしてこれはいばらの道だと思います。分散化でしか解決できない課題があることは認知しつつも、まずは広くweb3的サービスを一般普及させる方に注力したい。

こちらの方向性はクリプトネイティブな人にはウケが悪いのですがw 初めてNFTやトークンに触れたと言ってもらえるプロダクトが作れるといいなと日々開発を進めています。web3純度だけにこだわらず、より純度の高いものに触れる入口になるといいなと思います。

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