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皆伐地からのスタート~市民による森づくりのこれまで~(1997年~2019年のフォレスト21"さがみの森"活動史)

最初は雑然とした皆伐地

 1997年1月、市民団体が森づくりを始める現地検討会ということで、仙洞寺山の皆伐跡地の見学会が実施されました。下の写真が当時の皆伐跡地で、ここから現在の「さがみの森」となりました。

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 尾根を歩くと見晴らしがよく、新宿方面までよく見えました。皆伐地の面積は4.5haで、南側の小山頂の標高は531m(林班区分図による)、西側と中央、東側に尾根があり、西側と中央の間には深い谷が刻まれていました。現場は雑然とした冬枯れの景色が広がっていて、林床には細い枝ばかりではなく、太い曲がった丸太、寸法が短くて搬出されなかった幹材も、一面に放置されていました。

定例活動に100名近くが参加して植林

 1997年2月から、月2回の定例活動を開始し、伐採跡地の枝や丸太幹を片づけ、等高線に沿って並べて植林できるように地拵えを行いました。

 並行して、東京神奈川森林管理署、国土緑化推進機構、森づくり活動参加者たちによる連絡協議会が開催されました。第1回は2月4日、14名が参加し、どのような森にするか、協力体制などが議題になりました。連絡協議会は以後、毎月1回開催されています。

 各方面への呼びかけや報道もあって、1997年3月の定例活動に100名近い参加者が集いました。尾根に近い傾斜が緩やかな部分を中心に地拵えが進み、4月にはヒノキとコナラを合わせて1,000本の植林にこぎつけました。
  地拵えは翌年も継続し、1998年4月の宿泊付きの植林祭を開催しました。ヒノキと広葉樹を合わせて4,350本の苗木を植栽しました。1999年には1,900本、2000年には710本と植栽が続きました。

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 1999年に参加者用の休憩小屋の建設が始まりました。定例活動日以外にも作業日を設けて、作業が進められました。材料は現場の残材を購入し、ロゴソールで製材して利用しました。小屋の板の間はヤマザクラ材が使用されています。小屋の床面は当初土のままでしたが、のちに木レンガを製材し、しっかりした木レンガ敷きになりました。

2001年頃から下草刈り開始

 このころから植林地には草やツルの繁茂が目立つようになり、大鎌を使った下草刈りが開始されました。暑い時期、急傾斜地での草刈は大変でした。

 悪いことに、植栽した広葉樹は草にまぎれ、天然の発芽生育木や萌芽木と区別がつきにくく、誤伐が報告されました。足場が危うい場所もあって、作業の手が回らない場所も発生しました。

 また、下草刈りを開始すると、シカの食害も報告されるようになりました。「南側6km付近に作られた宮ケ瀬ダムの湛水が始まって、シカが移動してきたのではないか」という話もありました。草を刈りすぎず、苗木の回りだけを刈る坪刈りが提案されました。

 管理作業を進めるために作業道の整備を少しずつ進め、中腹の中道、谷道の階段も歩きやすくなりました。

 2002年からは、事業対象地が4.5haから19ha(270林班全域)に拡大されました。拡大域の人工林スギ・ヒノキでは、生育して密度が高くなったヒノキ等の枝打ちや、不良木の除伐を開始しました。

虫害や雪害も発生

 2004年、コナラが生育してくると、幹の下部にカミキリムシの食害が大発生しました。防除(産卵防止)のために幹回りに新聞紙を巻き付けました。

 2005年1月には20cmほどの積雪で広場のテントが倒壊しました。2006年1月、2008年1月にも積雪があり、若いスギ・ヒノキを中心に倒木、幹折れの被害が発生しました。高さ4~5mに生育した倒木は麻縄ロープで上部から引っ張り、幹を起こしました。

 その後も拡大したフィールドでの作業路の整備を進めました。急傾斜のところは階段づくりを行い、安全に移動できるようにしました。その結果、フィールドから仙洞寺へと徒歩でいける道ができました。

 2008年、植林イベントで崩壊地部分や広場周辺で広葉樹の補植を行いました。2009年に急傾斜地で、荒廃していた場所にヒノキの植林を行いました。


2010年頃から間伐・枝打ちも本格化

 ヒノキ植林地は、植林後10年を過ぎると枝葉の密度が上がり、林床が暗くなってきます。樹形の悪いものは除伐を行い、本数調節の間伐も開始しました。

 除伐・間伐はノコギリで行い、伐採した幹材は枝葉を払い、林床斜面に平行に並べて、林床の浸食防止を図りました。幹材は作業路の階段材料にも利用しました。

 枝打ちは一本梯子を使って進めました。当初は2m一段の一本梯子でしたが、樹木が生育するにつれて、2段の一本梯子で行うようにしました。林道下の谷で大きく生育したスギの枝打ちは3段の一本梯子が使用されましたが、林内の足場の悪さと梯子の重量で運搬が大変でした。

 2014年の2月には、林道の途中で深さ80㎝ほどの記録的な積雪がありました。大きく生育した植林木の被害は少なかったのですが、若いヒノキ植林は倒木が多く、ロープで雪起こしを実施しました。

 その後は間伐、枝打ち、作業路・林道補修などを行ってきました。クズで覆われたままになっていた中道と中尾根の間の谷では、クズを払い、低木群を片付けて作業道を作り、2019年春にウリハダカエデ、カツラ、クワ、トチノキを補植しました。

 ふれあい体験では、間伐・枝打ちのほかに、植林、草刈り、自然観察、昆虫採集、丸太切り、薪割りなども行われています。

 2019年10月、さがみの森では台風19号とその後の大雨で、林道沿いの土砂崩れ、山腹崩壊、谷の土石流が発生し、大きな被害を受けましたが、尾根から山腹上部は被害を免れました。被害地の回復には時間がかかりますが、できるところから取り組んでいきたいと思います。

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記事:坂場 光雄さん

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