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もともと特別な、オンリーワン

『抹茶ソフト1つください!』

出会いは中学1年の春。
ノー部活デーの毎週月曜日、決まって小さな広場でクラスメートと野球をしていた。

そんな野球終わり、店前に抹茶ソフトのモニュメントを構えたお茶屋さんに立ち寄ったのが出会いの始まり。

夫婦と娘さんの家族3人で経営しているお茶屋さん。
運動後の乾いた喉を癒そうと、僕たちは無意識に抹茶ソフトを注文していた。

『抹茶は苦くて子供の口には合わない。』
そう思っていた僕たちのイメージを払拭したのが、この店の抹茶ソフトだった。苦味甘味が絶妙に合わさったクセになる味がたまらなかった。

シンプルな抹茶ソフトだけでなく、シリアルイチゴのソースがかかったトッピングいちご、お家でも楽しめる抹茶モナカといった種類の豊富さ、そして何と言っても抹茶ソフト1つで当時は160円というリーズナブルさが僕たちのハートをにした。

気がつけば毎週月曜日は、野球⇨抹茶ソフトのルーティンが身体に染み付いていた。

そう。このとき僕は人生で初めて『食べ物に恋をした』

おじいおばあちゃん家のように、テレビを観ておじちゃんたちと会話をしながらのんびり過ごせる環境もたまらなく気持ちよかった。

しかし、高校、大学、社会人と大人になるにつれ、僕自身が地元から離れたことで、お店に行く機会はぐっと減った。

『あのお店の抹茶ソフトが食べたい。』
暑い夏の日、寒さで凍える冬の日、コンビニで抹茶アイスを見かけた日、
不意にここの抹茶ソフトが食べたくなる。

GW、お盆休み、年末年始。
今でも帰省のたびに『抹茶ソフトを食べに行こう!』と、共に通った仲間に声をかけ、このお茶屋さんを訪れる。

これからの長い人生で、僕の中でのナンバーワンは他のものになるかもしれない。でも、僕の中でのオンリーワンは、いくつになってもこの初恋の抹茶ソフトだろう。

いつか、この抹茶ソフトのようにオンリーワンの存在になれる日が来るまで、僕は走り続ける。


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