デジタルのハーバード大と言われるHyper Islandでマスター(修士)を取るまでのお話12

マスタープログラムは3つの必修科目を受けたあと、選択科目から3つを選び受講します。

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最初の必修科目は、現代人にとって読み書きそろばんの次に大事と言われる「Design Thinking(デザイン思考)」。
人々のニーズのレンズを通して変化を捉えていく、ということを実際に行うわけですが、発散思考と収束思考を繰り返し、インサイトを探り、アイディエーションを行い、プロトタイピングをする。そしてャーニーマップを始めとする様々なフレームワークを駆使しながら厄介な問題を解決する考え方である、と頭では理解していても、実践する機会はこれまでそんなに多くはなかったです。

Hyper Islandの原則に則り、デザイン思考もLearning by Doing(手を動かしながら学ぶ)によって習得するため、キャンパスには実際にクライアントがやってきました。我々はチームに分かれ、プロフェッショナルとして4日間でクライアントの課題をそれぞれで解決しなければなりません。
このDesign Thinkingの単元のクライアントはMoët Hennessyでした。
クライアントのブリーフには「我々Moët&Chandonは、オフトレードとオントレードの両方において、レストランとカジュアルバー事業領域で、どのようにマインドブランドのトップになることができるだろうか?」と書かれていました。

もうね、この最初の課題がすでに、ひっかけです。だって、アジアにおいてMoët&Chandonはすでにトップですから。つまり、課題のリフレーミングを行い、真因課題を見つけることが最初のチャレンジな訳です。
私たちのチームは課題をこのように再定義しました。
「我々は(あまりお酒を飲まなくなっている)若者に、どのようにして、より多くの場面でシャンパンを消費してもらうことができるだろうか?」
この課題に基づき、アイディエーションを行い、決まったアイデアをカタチにし、テストする。文章で書いてしまえば簡単なことですが、限られた時間の中で試行錯誤しながらカタチを作っていくのはとても難しいことです。

私が一番驚いたのは、それぞれのプロセスの中で、数多あるデザイン思考フレームワークから何を選んで適用するか、ということにおいて他のメンバーがものすごい知見を持っていたことです。他のメンバーが呼吸するようにフレームを採用し、こなしていく。これは、普段の仕事においていかにデザイン思考が深く浸透しているかを示すものであり、私が普段仕事をしている日本企業やチームにおいては足元にも及ばない、という強烈な体験でした。
海外ではデザインセオリーやメソッドがこんなにも当たり前で、職種や職能を問わず適用しながら仕事をしている。勝てる気がしないとはこのことか!って感じでした。

そんな中で自分が何か能力を発揮できる部分を必死に探しました。
振り返ってみると、デザイン思考プロセスにおいて、おそらく私の強みとなったのは「共感」と「視覚化」だと思ってます。「他人の靴を履いて歩くように相手に共感する」こと、これは言葉の壁が逆に力となったように思います。言ってることが全部はわからないから、仕草や表情、その背景を読み取ろうとする意識が強く働き、結果として相手に強く共感する。また、視覚化についても同じで、言葉で説明できないから「ビジュアルで見えるようにする」しかない。

余談ですが私たちのチームがMoët&Chandonへ提案したソリューション「ひとくちサイズのシャンパンボール」は、後にヘネシーを使用した見た目そっくりな商品が出ているのを、メンバーの誰かが見つけて教えてくれました。いかにもデザイン思考らしいお話です。笑



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