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音楽の先達へのリスペクトが溢れ、多幸感に満ちている

Apple Musicのジャズの新作コーナーを見ていて、ジョン・ピザレリの新譜が出ていることに気づいた。

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タイトルを見ると、ソロギターでパット・メセニーの曲を演っているらしいので、とりあえずダウンロードして聴いてみた。

音を聴くと、全編でナイロン弦のギターを使っているのはわかるのだが、どうも音色がコンプかけすぎ気味というか、ブーストしすぎな感じの音で、最初は正直なところ違和感を感じていた。

ただ、しばらく聴いているうちに、その音色やノイズもなんだか心地よく思えてきて、ちょっと好きかも、と思うようになってしまってからヘビロテアルバムになってしまっている。

中毒性高し!

ジョン・ピザレリといえば、父さんのバッキー・ピザレリの方が個人的には馴染みがあって、僕の敬愛するテナー・サックス奏者のズート・シムズとよく共演をされていたのを憶えている。

中でも「Nirvana」というアルバムはよく聴いたのだが、最後にバッキーのギターソロによる「Send In the Clowns」が入っていて、これがまたとても美しいメロディと音色で、聴き惚れてしまった。まさに名演です(当社比)。

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バッキー・ピザレリは7弦ギターでスイングするスタイルのジャズミュージシャンである。息子のジョン・ピザレリもそのスタイルを引き継ぎ、珍しい7弦ギターを操り、ボーカリストとしてもキャリアを重ねてきたミュージシャンだ。

ジョンの存在は知っていて、いくつかの演奏は観たり聴いたりしてたんだろうけど、ボーカル&ギターのイケメン若手ジャズマン的なイメージでの見方をしていたと思う。

そこでこのアルバムである。

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ジャケットのアートワークから、コロナ禍に関係したものであることが推察される。マスクをしているのは歌がないことも表しているのかな?

このアルバムのトレイラー映像というものがあった。

この映像の中で、父バッキーが昨年コロナが原因で亡くなったことや、その妻Ruthも1週間後に亡くなったことが語られていた。このアルバムはその弔いの意味もこめてあるのかもしれないが、その表現には父や母への感謝の念や、父を含めた音楽の先達へのリスペクトが溢れ、多幸感に満ちているものとなっている。

パット・メセニーの楽曲の良さも相まって、全編素晴らしいパフォーマンスなのだが、特に「James」という曲(ジェームス・テイラーへのトリビュート)が印象深い。

この曲を演奏している映像が、彼のYouTubeチャンネルで公開されている。

ちなみに、本家メセニーの演奏も素晴らしいです。
クリスチャン・マクブライドのエレキベース(フレットレス)も珍しい。

この演奏、アルバムを聴いて、自分の中での彼に対するイメージは更新された。音楽に対する卓越した技術と知識、それと音楽やそれを紡いできた先達への愛を感じ、掛け替えのない存在となった。

自分自身、このコロナ禍でいささか閉塞感や不安を感じていたりする訳なのだが、そんな時に音楽が心の支えになっていることは多い。

昨年も、小曽根真さんの演奏に救われた。

自分は美術や音楽、芸術に確実に救われている。
これらに接することがなかったら、なかなかツライ状況だろうな。

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