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30秒ストーリー『ミニマリスト』

ぼくは部屋を見回した。
一人暮らしのワンルーム。
狭い部屋だけど、ぼくはとても満足していた。
なぜなら、半年前からモノを減らすことに成功していた。
部屋にあるのはベッドと机とイスがひとつだけ。
洋服は全部で3日分だけで、段ボールひとつに収まっている。
もちろん冷蔵庫や電子レンジはない。
だって外にはコンビニがある。
そして今度はコップを捨てようと思っている。
水道から、直接口で水を飲めばいいのだから。

モノの少ない生活は気分がよかった。
すべてを自分でコントロールしている「力」を感じた。
まわりの友達は、常に「モノ」にしばられていた。
新商品を買ったり、流行のモノを追いかける。
だからぼくは友達も減らしていった。
おかげでもうスマホが鳴ることもない。
だから今度はスマホを処分しようかと思っている。
相乗効果だ、すばらしい。

今日は休日だ。ぼくは外に出ることにした。
そしていつものバックパックに手をかけた。
しかしその時、脳裏でもうひとりのぼくがささやいた。
「荷物、もっと減らせるんじゃない?」
ぼくは体から血の気が引いた。
その通り。バックパックなんて大きすぎる。
それに中身はほとんどゴミだ。
逆さにしてモノを出す。
ガム、何年も前に見た映画の半券、財布。スマホ。
全部いらない。捨ててしまえ。
何も買わなければ金もいらない。
ぼくは手ぶらででかけることにした。

ああ、なんて自由なんだろう。最高の気分だった。
そして部屋を出ようとした時、再びもうひとりのぼくがささやいた。
「もっともっと、モノを減らせるんじゃない?」
ぼくは自分自身をゆっくりと見た。
気づかなかった。そうか、盲点だった。
ぼくならもっと身軽になれる。
そしてぼくは部屋で準備を終えると、ドアを開けて外に出た。


パトロール中の警官が歩いていると、目の前に一人の男性の姿が見えた。
警官は思わずため息をついた。
この季節多いんだよな。ひとりごちながら無線のスイッチを入れた。
「えー、全裸の男性1名を発見。至急応援お願いします」

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