見出し画像

仙腸関節障害に対する問診

たくみロドリゲスさんのTweetをみて,
大学院で仙腸関節を研究している身としては居ても立っても居られなくなり,思わず筆を執った.いやタイプした.

私は研究や非常勤講師を務めながら,整形外科クリニックで勤務している.
曲りなりにも,臨床にでて10年目だ.

腰椎疾患は特に問診が重要であると考えている.
ある有名な理学療法士の教授は,
"その人の問診を見れば,だいたいその人の臨床力がわかるね"
と仰っていた.
これは心に留めておきたい言葉だ.
と同時に理解していただきたいのは,
問診は経験年数に関わらず,獲得できる評価技術だということだ.
何年も練習しないといけない徒手療法とかではない.
意図して1単位20分の中に組み込めばいい簡便かつ最も効果的な評価だ.
検査における事前確率を最も左右すると言ってもいいだろう.
さらに,この問診を丁寧に行うことで,患者さんからの信頼も得られるだろう.
今日の臨床から問診力を高めていきたい.

仙腸関節の概要やスコアの深堀りは別の機会に書こうと思う.今回は問診だけのちょっとしたコツだけだ.

腰椎疾患の中でも仙腸関節障害は,まず問診で"疑う"ことが大切だと考えている.
ただ,疑うには前提とした知識が必要になる.

日本仙腸関節研究会による他施設研究

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28204687/

日本仙腸関節研究会 6 施設の共同研究におい て,
仙腸関節障害に特徴的な所見 10 項目を仙腸関節障害(62例)
腰椎椎間板ヘルニア, 腰部脊柱管狭窄症(計59例) と比較した研究だ.
1,one finger test で PSIS を指さす,
2,鼠径部痛,
3,仙結節靭帯の圧痛
の項目で腰椎椎間板ヘルニア, 腰部脊柱管狭窄症 と比べて
有意に陽性率が高い結果であった.

さらに,

One finger test で PSIS 付近を指さす:3 点,
鼠径部痛:2 点,
椅子座位時疼痛: 1 点,
Newton テスト変法:1 点,
PSIS の圧痛:1 点,
仙結節靭帯の圧痛:1 点
の合計 9 点のスコアを作成した結果,
スコア 4 点以上で仙腸関節障害と腰椎椎間板ヘルニア, 腰部脊柱管狭窄症との
鑑別の感度:0.9,特異度:0.86 と高い値になり, 鑑別に有用であると考察された.

あくまでも腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症との鑑別に有用であり,診断の"補助になる"スコアであるということは理解されたい.
最終的には仙腸関節ブロックによって確定診断にいたる.

仙腸関節障害に対する問診の例

問診の話に戻そう.
上記のスコアを参考にすると,問診の時点である程度,仙腸関節障害を絞り込めるのがわかる.
以下に一つの例を示す

・痛む所をご自分の人差し指で示せますか?
 PSISを示すようであれば,3点だ
 すでに3/4点を獲得するわけだが,それほどまでにone finger testは有益ということだ.
 鼠径部の痛みを訴えるようならば,
 これでさらに2点でカットオフポイントの4点を超える.

・どんな姿勢で痛みますか?
 椅子に座っている時の痛みがあれば,1点だ.
 もちろんこの座位時の痛みが上位腰椎や大腿後面のみにあるようなら話は別だ.
 あくまでも腰部骨盤領域に出現する時に加算する.
 運転中,ソファーに座っている時などの座位時はこのスコアでは除外する.

・その時(座位時に)どこが痛みますか?
 PSIS辺り,坐骨結節周りを指差すようであれば,PSISや仙結節靭帯の圧痛が所見として得られるかもしれない.(各1点)これはそのままの姿勢で圧痛をとってもよいだろうが,腹臥位でもよいだろう.

・Newton テスト等は問診ではできない...

いたってシンプル.
仙腸関節スコアをもとに問診を行うことで,ある程度,仙腸関節障害を"疑う"ことができる.
気づいた方はみえるだろうが,"いや,そんなの普段から聴いているよ"ってものばかり.
そう,その通りだ.魔法のコトバなんてものはないのだ.
先人の知恵を借りて,つまり論文・書籍(今だったらnoteでもいい?のかは置いておいて)を読んで知識を少し加えるだけで
今まで見えなかった腰殿部痛の原因が少しわかるようになる.

これは恩師によく言われたが,
"論文を読んで一つ賢くなったら,一つ技術が変わらないといけない"
これは論文でなくnoteだが,これを読むことで,少しでも腰殿部痛の見え方が変わり,技術に昇華されれば幸いだ.

morito,

続く.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?