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『凍った脳みそ』後藤正文著を読んで

後藤正文著 ミシマ社 2018年出版

 アジアンカンフージェネレーションの後藤正文さんが自前のスタジオ作りのことを書いたエッセイ。朝日新聞に「後藤正文の朝からロック」という文章を毎回読んでいて、結構好きだったから、どんなエッセイを書くんだろう、という興味で図書館の棚に発見したので、借りて読んだ。

 朝日新聞のコラムとは違ったテイストで、主語が「俺」で日記風でもあり、音楽やっている人は音響設備などの話や、スタジオの話が読めて、面白いんじゃないかと思った。DIYで自分のやっている音楽を突き詰めていく姿勢が読んでいて、とてもワクワクした。

 読書で大事なことって読んでいて自分もやってみようかな、とか私もこんなことしてみたいなと思い立つようなワクワク感である。後藤さんの本読んでいて、良い設備を整えるにはお金の問題もあり、時に挫折もあり、時にトキメキもあり、自前のスタジオづくりが楽しそうであった。

 私は知らなかったんだが、今、コンピューターでなんでもできるのね。マシーンを買わなくてもパソコン一つでいろいろできるらしい。ミキシング・コンソールを買う話は面白かった。コンピューターの画面のなかのバーチャルな存在としてのミキちゃんは「二次元に留まって立体化することがない。従って摘んだり捻ったりもできず、スマホのゲームアプリでガチャをやり倒したときのような悲しみが時折湧き上がってくるのだ。」という表現に「なるほど」、と思った。なんか二次元の画面上のゲームって何か手ごたえなくて、むなしい感じするもんね。スロットマシンをひたすらツンツンスマホの画面でやっている人を見て、私は同じような感覚に陥った。実際、ボタン押してないで数字がそろっても、実感あるんだろうか、と。

 若手エンジニアの話とか出てくるんだけど、そんなに高い機材買い集めてどういう仕事やっているんだろう、と疑問に思った。音楽って実はほんとにいろんな人の手にかかって作り上げられているんだな、と思った。そこをどこまで自前でやるか、というのは、私も音楽やってたら突き当たっていた問題かもしれん。

 音楽好きにはぜひ読んでもらいたい本だと思った。


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