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コンテンポラリー若者ーー白岩玄著『野ブタ。をプロデュース』を読んで

 白岩玄著 河出文庫 2008年出版

 ずっと昔になんかの本で、この本おもしろい、とあって、この前もちょうど鴻巣さんの本読んでたら、ぽろっと書かれていたので、気になるから読んでみようと思って読んでみた。

 高校生の青春物語で、こういう小説読む年ではないんだけどな、私、と思ったが、話の構造はおもしろいな、時代を反映しているな、と思った。さえない転校生を、クラスのイケイケの子がプロデュースして、人気者にしてあげるんだが、最後に、その主人公の男の子を、同じ仲間の子が見捨てる形で裏切ってしまって、それがクラスに広がりその子が孤立してしまう、というお話。高校生の人間との付き合い方に焦点が当たってて、深入りせず、軽い関係をなんとなくやってれば、この世はうまく渡り歩けると考えている若者が、挫折する話だと思う。

 でも正直なところ、最近の若者は、こんな風に軽い人間関係で友達付き合いをして青春時代を過ごしているんだろうか。著者は1983年生まれの人で、私の一個下らしいから、私と同じ時代に、学生生活を歩んできた人だと思うから、こういう軽い付き合いが当たり前の高校生というのは、私は比較的理解できる。しかし、現代の若者はどうなんだろね、とこの本を今更読んで思った。結構売れた小説だから、この本を読んでいる人たちは多いと思うが、それは自分の学生生活に共感してたからなんだろうか。

 とても分かりやすい話だったが、最後の方のしまりが悪くて、終わりの数ページ、いらないな、と思った。最後がだらだらしてしまう作品って、書籍化されるまえに、編集者とかになんか言われないのかな、と思う。私としては、マンガで言えば『20世紀少年』なんて、最後にマンガ家本人みたいなのが登場したり、フン切れが悪いというか、なかなか終わらなくて、こういうだらだらしちゃう作品って、なぜ、誰の指摘もなく出版されるんだろう、とちょっと思う。でも、この『野ブタ』に関してはこういう数ページも評価の対象になるのかな、とちょっと思う。あってもなくてもいい、みたいな。

 こんなにデビューがはやい若者で、こんな売れた本があるんだな、と遠い目で思った。


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