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【読書感想】本屋さん必読の書ー『返品のない月曜日』を読んで

井狩春男著 ちくま文庫 1989年出版

書店関係で働いたことがある人は、ぜひ読んでおくとよい本。

 鈴木書店という取次で働いている人がかいたエッセイ。「まるすニュース」という手書きの日刊誌を発行して書店などに、新刊や復刊の書籍のニュースを発行していたら、それが話題になったらしい。

 1989年に出版されているので、やはり、今とはだいぶ異なった出版事情ではある。でも現在の状況は、ここに書かれている本の流通を辿ってきているわけだから、知っておいた方が良い情報だ。当時ネットなどなかった時代に、絶版になった本をいかに入手できるか、といった裏技の紹介など、一昔前だったら知っておきたい情報が書かれている。今は、Amazonでポチすればどんな本だってたいがいは手に入る。現在は、絶版の本だったら「日本の古本屋さん」というサイトだろうか。便利になったものだ。だいぶ、時代が進んだのを感じるが、本屋さん関係で働いていたら、昔はこうだった、と現在に至るまでの流れを知っているべし。

 私は大学生のころずっと書店でバイトしていた。始めはスリップをつかって発注かけていて、その作業を見ていて、こんなめんどくさいことやってるのか、と感心したものだ。それが徐々に、スリップに頼らなくなってきてPCのシステムを使うようになった。今でも、Amazonから本が届いたときに、本の間にスリップが挟まっているのをみると、スリップはいつか消滅するな、と思ってしまう。でも、小さい書店はまだ頼りにしているとこもあるだろうから、大事なのは大事だ。とても、旧式だが、おもしろいシステムが残っているものだ、と思う。

 活字印刷が当たり前になった時代に、この著者は手書きの日刊誌「まるすニュース」を書いていたから、当たったらしいが、今だったら、どういう媒体でそういうことやれば当たるんだろう。手書きで書くことは、今の時代でもとても有効な宣伝アピールのように思う。なんで、そういうことやる人ってみんな字がうまいんだろうなと素朴な疑問を抱く。

 この本は、お蔵入りにした方が良いと私は思う。


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