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【読書感想文】タサン志麻さんに惚れる

『厨房から台所へ』タサン志麻著 ダイヤモンド社 2019年出版

 タサン志麻さんのレシピが盛り込んであるエッセイ。家政婦をしてフランスの家庭料理を作るまでの自分の人生を振り返ったことを綴った本だった。

 私がタサン志麻さんを知ったのは、テレビ。地味な見た目の人だが芯が強そうで、なんとなく彼女にとっては場違いなんじゃないかと思えるつくりのテレビ番組だなあ、と思いながらテレビを観ていた。しかし、その手さばき、アイディア、頭の回転の良さに魅了された。そして、なにより、フランス料理といっても、レストランで食べるフルコースのようなものではなくて、家庭料理を作る彼女の料理が自分でも作れたらいいな、と思い、その時からファンになった。

 この本を読んで、志麻さんっていわゆる普通のフランス好きの人だったんだな、と思った。なんか意外だった。気落ちしたのと同時に、その分だけフランス家庭料理に惚れ込んだ人なんだな、とも思った。

 フランス好きな人って、フランス語しゃべる練習をしたいからフランス人と交流のある仕事を選んだり、個人的にフランス語が達者な人にレッスンを受けて人間関係作って、英語とは違うある種独特の個人的な付き合いを形成する傾向があると私は思っている。確かに英語の場合は、日本にある程度コミュニティがあるから、そこに入っていく努力をしている人は見かけるが、フランス語は個人プレイが多いように思う。それは、その人それぞれのフランスに対する熱を温めていく努力だと思うし、タサン志麻さんの場合フランス熱の出どころはフランス料理だった。

 フランス語を勉強するために、フランスの料理番組の翻訳をした、というのはとてもおもしろいな、と思った。そういうところから彼女の料理のアイデアは来るのですね。フランス語を教えてもらった人に食べさせてもらったクロックムッシュー、そういう味が忘れられない。

 そして、本場のフランス文化を知ろうと思うとそういうところにいきつく気持ちは分かる。それは彼女の料理に現れている。難しいフランス料理ではなく、ワインやバターを使ったごく簡単に作れる家庭料理。フルコースのフランス料理食べてフランス料理人になりたいという人より、俄然好感が持てるし、それぞフランスに惚れ込んだ人なんだと思う。

 これからも、どんどん活躍してほしいです。


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