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【読書感想】破壊力のある人ー『樹木希林120の遺言』を読んで

樹木希林著 宝島社 2019年出版

 図書館の棚に刺さってたから借りて読んでみた。

 樹木希林が2018年に亡くなってから、それまでの雑誌のインタビューなどの彼女の言葉をまとめて編集された本。まえがきにかえて、は養老孟司さんだった。

 夫、内田裕也のこと、死のこと、家族のこと、などにまつわる発言が主に集められている。ガンを患わっていたので、死にまつわる発言が多かったが、私はむしろ彼女の若いころに思いを馳せた。「本当は、どこに飛んでっちゃうかわからないような人生を送るはずだったんです、私が。」といっているように、結構、破天荒な若い時代を送っていたようだ。内田裕也のことを「だからいい重しなんです」というところなどから、自分よりさらに破天荒でロックンロールな人と結婚したら、自分が少しまともな人に周りからみられるようになったらしい。「ゲリラ的な、ものを破壊したくなるという気持ちを共有できる。」という言葉は、樹木希林の若いころの血の気の多さのようなものを感じた。私はおばあさんになったころの樹木希林さんしか知らないけど、若いころ血の気が多くても、こんなふうに年取れるんだ、と思った。たしかに、常識と思われているものを破壊する力は年を召しても顕在していたような気はする。若いころはそういうことを言うと物理的に破壊力のある危険な人、みたいな印象をうけるが、年をとった樹木希林がそういうと、貫禄のあるおっかなさ、迫力を感じる。ある意味で、樹木希林も、ちょーロックンロールなおばあさんだと私は思う。けど、こんなにも死を受け入れてて、「死ぬときぐらい好きにさせてよ」とCMでいっちゃうくらい彼女はとても自由な人だ。家庭をもって、夫に離婚届を出されても、離婚せず、彼の税金を払い、子育てして、ガンになり、仕事も全部自分一人でオーガナイズし、なんて、スーパーすごい人としか言いようがない。そういう過程で、その若いころのあふれるようなエネルギーが、とてつもない落ち着きと貫禄がある樹木希林にしていったような気がした。

 こんなふうに生きて、こんなふうに私も死んでいきたいと思った。

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