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消滅するーージョン・ヒッグス著『THE KFL』を読んで

 ジョン・ヒッグス著 中島由華訳 河出書房新社 2018年出版

 2018年の朝日の書評に椹木野衣が書いてて面白そうだと思って即行借りた。1970年代にハウスミュージックというかサンプリングミュージックみたいなのを作っていて、いろいろ世間を騒がせることをやった人たちらしい。100万ポンドの紙幣に火をつけて燃やして、それがすごく騒動になったらしい。

 まず、文章が読みにくい。翻訳ヘタなんだな、と思って読んでたが、多分、原文の著者も話がいろいろとんでて変な文章書いてんだな、と思った。こういう本ってどうやって翻訳者とか決まるんだろうな、と疑問に思った。

 結局、ユング思想に触発された、だの、共時性、シンクロニシティとかいろんなこと言い出して、宗教みたいのが早くに立ち上がって、儀式まで行ったことがあるらしい。死んだ羊をみんなの前で解体して八ガロンの血をぶちまけようとしたり。笑えるのか、怒りを買うような行為なのか、おふざけなのか、反権威主義的なこと考えてるのか。

 シチュアシオニストのことに言及しているのは正直驚いた。’(この著者が)ダダのことも書いてあったし、やはりそういう意識あったのかな、とか思ったけど、好きじゃないな、とは思った。でも、こんな1970年代にもうある程度パフォーマンスアート的なことやっている人いたのね、と思った。音楽という領域ではあるにせよ。今は、アートとして変なことやってるみたいだけど。

 でも私が、大学院いて、こういうアート勉強してるときにこの人たちの話、全く耳に入ってこなかったな、と思った。KLF専用のサイトとかあるらしいから見てみようと思うけど、作った音楽も、全部廃盤にしたらしく、ほんとに結構ぶっとんでる。

 私としては、自分たちのやったことを、時間が経っても大切にできるような作家がいいな、となんとなく思った。たぶん匿名性とか芸術運動とかそういうのが導入されてきた時代なのかもしれないから、おもしろそうだからやってみよう、という気持ちは分かるが。私が言いたいのは作品を残そう、っていうかアーカイブのようなものは大事だと最近思っている。

 最後の方に、著者がこのKLFが影響されてた変なSFみたいな小説『イルミナリティ』の一節を引用しよう、といって「自分で考えろ、馬鹿野郎」と書いてあったが、なんか、このKLFについては、いろいろ議論するより、この一言に尽きる気がした。

 彼らがお金燃やしたのは1994年なのだが、ニルバーナが死んだ年であったり、音楽シーンで派手なことがいろいろ起こった年で、なんかそういう時代の流れってあるな、とは思った。


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