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【読書感想】リズム感のある名訳を読むー『ハックルベリー・フィンの冒けん』を読んで

マーク・トウェイン著 柴田元幸訳 研究社 2017年出版

 柴田元幸さんの新訳が出版されてからずっと読んでみたいと思っていて、今回時間があるんで読んでみた。分厚いけど、ひらがなばっかりなので、すぐに読めた。

 ハックルベリー・フィンという男の子が、いかだを使ってイリノイ州からミシシッピ川の方まで黒人の召使と旅をする話。途中でいろんな人に出会いトラブルに巻き込まれたりするのだが、凄まじい生命力で、この冒険を成し遂げる。途中、このままこんなに進んでいったら、家に帰れないんじゃないかな、とか心配になるんだが、暴力をふるう父親やしつけの厳しい夫人には未練もなく、自由を求めていく旅となっている。

 フィンが身元を明かさないで、出会う大人たちに嘘ばっかり言っている会話には、よくこんな嘘つけんな、と感心させられる。それが、ハックの凄まじい生命力を感じさせる原因である。仲間が死んじゃうんじゃないか、とかこっちがびくびくしていても、死というものをあっさり受け入れられる心構えもあって、というか時代だからってのもあるけど、本当にたくましい。

 偶然トムに出会って、囚われた仲間の黒人を奪い返そうとするのだが、その時の計画が子供ならではの滑稽さで大人を翻弄させ、ほんとこの悪ガキと思う。当時の黒人たちがどんな生き方をしていたのかもわかる。英文科を出てる母がこの本は英文では必須の書だったと言っていたのが、小さいころから耳に入っていたから、私もこの本読まなきゃと思っていたのかもしれない。もっと子どもの頃読んでたら、冒険の話を自分もいっしょになってワクワクしながら読めたかもしれない。今の私は「これからどうなっちゃうんだろう」、という気持ちの方が多かった。子どもの頃って後先考えずに家出しちゃったりするもんね。そういった少年たちの冒険としては子どもが憧れる冒険譚になっている。 

 最後に付け加えておかなくていけないのは、やはり、名訳であるということだ。当時の子どもと召使の黒人とのやりとりがとても生き生きと描かれていて、訳にリズムがある。名訳にリズムを感じたのはこの本が初めてかもしれん。


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