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【読書感想】自治体について思うことー岡田憲治著『政治学者、PTA会長になる』を読んで

 岡田憲治著 毎日新聞出版 2022年出版

 今住んでる団地に引っ越してきて15年くらいたつが、その間に自治会の役員と管理組合の副理事を経験して、仕事ではないこういう活動ってなんなんだろう、と疑問に思っていて、この本を見た時、ここに何か書かれている気がして読んだ。

 この本はタイトルそのもの、大学で働いている政治学者岡田憲治さんが、子どもの公立小学校のPTAの会長になって3年間活動した話が書かれている。

 私は子供がいないので親の立場でPTAの実態を知っているわけではないが、学校事務で働いてるとき、PTAってめんどくさい存在だな、と思った。あと、なんとなく耳に入ってくるPTAってなくてもいいんじゃね、みたいな否定的な意見きいてて、親はやりたくないんだな、と思っていたし、こういう自治体ってボランティア精神で働いてるけど、実際問題、みんないやいやだよな、と思っていた。でも、やるからには楽しく、みんなが生活しやすいように改善していくもんなんじゃないか、とは思う。この本読んでて、オカケンさんが古いしきたりにのっとって動いているお母さま方と会話して良い方向に変えていこうとする奮闘はとても参考になった。例えばベルマークの話は本当に笑った。膨大な時間と労力をかけてベルマーク収集をやるが、そのわりには儲けがない。無駄なんじゃないの、と言いかけたら、ある方が、そのベルマークの収集作業の時、奥様方で集まって、ダンナの悪口になり、よいガス抜きになっているという。著者はこのガス抜きがなくなったら、どこかで爆発して、よいバランスが保てなくなると判断し、ベルマーク収集作業は「最重要活動」と位置付けるに至る。私だったら、なにを大げさな、そんなにダンナの悪口いいたいなら、どっかに集まって別にやってくれ、と思ってしまうが、その集まりがすでにそういう会として機能してるって、なんかこういうことを考慮に入れていくのがこういうボランティア活動だよな、と思った。

 なぜか自治活動には、代々伝わってきためんどくさい慣習みたいなのがあって、無駄じゃね、と思う活動が多い。もっと効率よく作業して、もっとためになることしようよ、って思っちゃうんだけど、「ためになること」が人それぞれ違うし、地域の自治体はこういうなんでもない集まりが、「ためになること」として機能している側面もある。ただ、仕事抱えながら参加してる人とか、子育て大変だけどやってる人とか、一人暮らしの人とか、そういうのも考慮に入れてほしい。主体になっている考えが、「主婦」であることが多い。それは決して主婦をバカにしているのではなく、オカケンさんも言ってたけど、「主婦」だって家事という仕事をしてるし、他人がそんなこと言ってる場合じゃないんだけど、それまでの制度とか慣習とかを押し付けるのはやめてくれ、と言いたい。というか、もっと多様性に富んでほしい。良い方向に持っていこうとみんなが努力すべきことだと思う。

 変わり目だと思う。女性も仕事するのが当たり前になってきた。「自分たちで決めるということ」をオカケンさんは挙げてたけど、もっとそういう場であってほしいと思う。


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