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【読書感想】女性の敵は女性ではないー松田青子著『持続可能な魂の利用』を読んで

松田青子著 中央公論新社 2020年出版

 制服のような同じ服を着た女の子たちが海の真ん中にある岩に裸足で登っている写真が印象的な表紙の本だ。

 推しのアイドルグループに惹かれる年配の女性と彼女にまつわる仕事仲間の関係が書かれた小説。

 不覚にも、主人公の敬子が非正規で働く職場でセクハラにあって仕事を辞める場面で泣けた。セクハラってこういうわけわかんない男性のゲームみたいに事がすすみ、会社側もこういう見て見ぬふりの対応で、なぜか結局、被害者である女性が辞める羽目になる。その微妙な人間の駆け引きがこの場面によく書けてて、なんでこうなんだろう、と私は思った。でも、この小説では、同僚の女性が仲間になってくれる。この本読んでて、こういう闘う女性の仲間って案外いないんじゃないかな、と私は普段思ってる節があるので、とてもうらやましくなった。ピンクのスタンガンを携帯し、備えている女性。または、元アイドルで今は推しのアニメの二次創作をしている女性。それぞれ自分の事情を抱えた女性がいる。

 「日本の会社や社会のシステムに問題があるからって、その中で働いたり暮らしたりしている日本女性のことまで否定されたら腹が立つでしょ。冗談じゃないってなるでしょ。それはどこの国でもいえることだけど」p. 55

 私には仲間がいない。というか、女性の敵は女性である、と思っているところがある。私は、今まで社会の中で受けてきた圧力を感じてきたのが女性からの場合であることが多い。確かに、この小説で「おじさん」が敵になっているのは分かる。女性の敵に女性がなるのも、その女性を狂った行動に走らすのも、「おじさん」がくだらないシステムを作ったり、女性にそうけしかけているは事実だと思うが、女性に嫌がらせをするのも女性だ。なんで私は女性に恨みをもっているのだろう。自分でちょっとミソジニー的なものを感じるほどである。この本読んでたら、こういう女性の仲間がなぜできるんだろう、と不思議に思えた。私も自分と同じ女性に救われたい。

 主人公がアイドルグループに魅せられてハマる様子もなんとなくわかる。女性アイドルグループが男性のプロデューサーによって大量生産されて、女の子がいいように使われているような気がして嫌悪感を覚えるのも事実だが、にこりとも微笑まないある一人のアイドルに惹かれ、ライブに行って女子高生のりでいいな、と主人公が思う気持ちも分かる。分かるんだが、私はどうしてもそこに未来があるとは思えない。ここまで、女性嫌悪してる自分がこの本読んでて赤裸々になったようで、自分がいやになった。


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