手紙1

絶縁状

 あなたを想うと、とても胸が苦しくなります。あなたのまっすぐな目に貫かれるのが常に恐怖でした。
 あなたは私の光です。いつまでも穢されることなく輝いていてください。嫉妬などと言ったものではなくて、ただ、あなたの隣にいると取るに足らない自分の姿が浮かび上がってきて、悲しくなるのです。私の人生にあなたが現れて、私は常に劣等感にまみれた日々を過ごしている。
 私はもう、あなたに会いたくありません。一度あなたに会うと、思い出してしまうのです。あなたの輝きを。あなたへの憧れを。どうしようもなくあなたに惹かれてしまうのです。何故でしょう、どんなに苦しめられても、この複雑な胸の内を忘れたくはないのです。
 私も、あなたのように、何者かにならなければいけないのでしょうか。私とて今まで必死の努力であなたに取り残されまいと走って、今、もう追いつけません。あなたが、あなたの周りの人間もあなたと同じようであると期待するのが嫌いでした。
 あなたへの憧れは、強すぎて、あなたの光は、強すぎて、私の心に暗い影を落としてゆきました。そしてそれは、いつまで経っても、私の今まで生きてきた年数分色濃くなって、嗚呼もう、憧憬の念とはここまで苦しいものであったでしょうか。
 いつかあなたは、私のことを見てくれるでしょうか。
 まるで人一人失くしたかのようなこの痛みを、いつかあなたは和らげてくれるでしょうか。それとも私は一生、自分の傷とも言えぬ傷を(だってあなたは私を傷つけたことなんて一度もなかった)舐め続けていくのでしょうか。


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