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お寺と病院,なくなったら困るのはどちらですか

というご法話をされた先生がいらっしゃるそうです。

地域社会に必要とされる寺院,僧侶をめざして研鑽しなさい,今のままではいけないというメッセージの質問だと感じます。

しかし,この問いの立て方にはいくつか疑問を感じます。

①どちらかを選ばなければならないという前提がおかしい 

どちらも必要!ではいけないのでしょうか?病院に行ったらお寺に参ってはいけないというわけではなく,その逆ももちろん成り立ちません。病院が生活に不可欠だからといって寺院が必ずしも不要とはいえません。もし,「病院と警察,なくなったら困るのはどちらですか」という質問だったらどう答えるでしょうか?「両方」という人もいるかもしれません。病院とお寺,僧侶を比較したとき「どちらも必要!」という答えがでてこないのが寺院の現状を表しているのかもしれません。テストでもないのに,いつの間にか選択肢が提示され,そのどれかひとつを選ばせるように誘導するような話術(?)をときどきみかけます。質問がそもそもおかしいのではないか,正解は複数あるのではないかと批判的に聞くことが大切と思います。

②病院とお寺を比較することに無理がある

病院は水道,ガス,電気のような,生活に必要不可欠なインフラのひとつとして考えるのが適当ではないでしょうか?「電気とお寺,なくなったら困るのはどちらですか?」と質問すれば,多くの人が「電気!」と答えて当然と思います。どうしても必要なものと,人によって意見が違ったり,求めるタイミングや頻度が異なるものを比べるのは乱暴ではないでしょうか?お寺と病院ではカテゴリーが違うように私は感じます。「カレーとアイスクリームどちらが好きですか?」と聞かれるのと同じぐらい違和感があります。初めからお寺以外を選ばせるような質問になっている印象です。

③この質問をご門徒の方にする意図が不明である

教団,僧侶の研修会でとりあげるには,考えさせられるテーマであるとは思いますが,ご門徒の方に尋ねていったいどうなるのでしょうか?「やっぱり寺はいらんな!!」と思われたら困るのではないでしょうか?この前後にどのような話をしたのかはわかりませんが,質問だけを読むと目的が見えづらいのが正直な感想です。

屁理屈はいらないのです

いろいろな疑問が浮かんできますが,屁理屈ばかりいわずに,ご門徒の方がどのような思いでお寺を建立し,守ってこられたのか,想像力を働かせたいと思います。一方で,言われたことに飛びつかず,その言葉の指している内容や,込められたメッセージに気付く冷静な視点も合わせて持つことが大切と感じます。なんでも鵜呑みにする前に,一度「そうかな?」と立ち止まって考えることが必要と思います。

最後までお読みいただき,ありがとうございました。

合掌

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