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映画、漫画、アニメ、アイドルなどに関する投稿です。
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「千と千尋の神隠し」の成女イニシエーション

「神話と秘儀」に書いた文章を転載します。 ジブリ映画「千と千尋の神隠し」を成女イニシエーション物語としての観点から解釈します。 「千と千尋の神隠し」という作品の全体的な解釈ではありません。 また、監督の宮崎駿の意図の解釈でもありません。 「千と千尋の神隠し」という作品と、アフリカ、アジア、アメリカ・インディアンなどの伝統的な部族社会の成人・成女イニシエーション儀礼や、その名残を残したヨーロッパの童話との共通点をまとめるものです。 物語の始まり 成人・成女イニシエー

「葬送のフリーレン」:終わった後に始まる物語の始まりの解釈(再加筆)

「葬送のフリーレン」の物語の解釈、考察をします。 「葬送のフリーレン」は、原作マンガが少年サンデーで連載中で、コミックは11巻まで刊行されていますが、アニメの放送が始まったばかりです。 ですが、私は、マンガ、コミックを読んでいません。 ですから、アニメの第4話までで明かされた、この物語の始まりの部分の、物語の基本設定に対する、かなり私的で強引かもしれない解釈です。 マンガを読んでいる人からすると、そういう話ではないのに、と思うかもしれませんが。 マンガを読んでいないの

「攻殻機動隊SAC_2045」ラストの解釈

「攻殻機動隊SAC_2045」を見た人に向けた投稿です。 「攻殻機動隊SAC_2045」の結末のストーリーは、難解なだけでなく、視聴者に謎をかけているようで、その解釈が分かれています。 これについて、短く解釈、考察します。 ただし、私は「攻殻機動隊」シリーズにはそれほど思い入れがあるわけではなく、アニメの過去作は大体見ているものの、あまり覚えていません。 最終話で、草薙素子少佐がシマムラタカシのコードを抜こうとしますが、抜いたか抜かなかったか(Nを認めたか破壊したか)は

漫画「風の谷のナウシカ」と4つの社会体制

パソコンの中にあったメモを掲載します。 手元に漫画もなく、しっかりした文章にまとめていない草稿メモ的な文章です。 漫画「風の谷のナウシカ」の中心テーマは、ある種の原罪を認めながらそれを受容する「生命肯定主義」で、それを王権論、救済論、社会体制論と結びつけているように思います。 族長でも王でも皇帝でもなく 経済・政治体制、それと対応する宗教・思想が異なる4種の社会が描かれる。 (社会形態) (トップ) (作中組織) (思想) ・帝国   :皇帝   :ドルク   :清

「ビューティフル・ドリーマー」と「エンドレスエイト」と資本主義

「ももクロ→エビ中→東北産の魅力」で書いた文章を編集・加筆して掲載します。 ビューティフル・ドリーマー 映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は、難解な作品で、納得できる評論は読んだことがないのですが、簡単に私論を書きます。 この作品は、高橋留美子の原作を、押井守が勝手解釈して、自分の思想を表現した作品であると思います。 結論から書けば、『ビューティフル・ドリーマー』が描く「学園祭前日が繰り返される時空」は、「半祝祭」的な状態が常態化した「資本主義の日常

「トーマの心臓」の核心にある異教的テーマ

萩尾望都の初期の傑作とされる「トーマの心臓」のテーマの本質が、キリスト教の「神の愛(アガペー)」や「贖いの死」であると解釈する人が結構いるようです。 NHKで放送された番組「100分de萩尾望都」とその書籍で、小谷真理がこのような解釈をしたので、その影響が大きいのかもしれません。 確かに「トーマの心臓」では、キリスト教について多くが語られ、キリスト教のテーマがあることは間違いではないでしょう。 ですが、テーマの本質は、そこに隠された異教的なものであることについて書きます

ポーの一族(新シリーズ)

「萩尾望都の諸作品のテーマと継承」に書いた文章を転載します。 ちょうど40年ぶりとなる2016年の7月に「ポーの一族」の連載が再会され、現在も、連載中です。 当ブログではこれを「新シリーズ」、以前のものを「旧シリーズ」と呼びます。 新シリーズに関しては、連載中であるため、論表をするのは時期尚早ですが、このページでは、これまでの設定を中心にして、テーマ、モチーフの継承関係や、今後の展開について書きます。 2016年 旧シリーズでは、各作品の作中の設定年代は、作品の発表

萩尾望都の少年愛とエロス論

「萩尾望都の諸作品のテーマと継承」に書いた文章を転載します。 萩尾作品の多くには、少年同士や青年同士、青年と少年の恋愛が描かれます。 ですが、萩尾望都(以下、萩尾と表記)自身は、自分の作品について「少年愛」という言葉を使わず、むしろ「少年愛はわからない」と書いています。(「一度きりの大泉の話」、以下同じ) これは、竹宮惠子(以下、竹宮と表記)、増山法恵(以下、増山と表記)を意識した発言でしょう。 増山は萩尾の友人だった漫画家ではない人物で、萩尾が竹宮に紹介しました。

BABYMETALの宗教性

BABYMETAL(以下、BM)が表現している宗教性(宗教じゃなく)、その「死」と「創造(復活)」と「性」について、書きます。 メタルという音楽は、そしてBMのライブは、とても祝祭的なものなので、宗教性とは無縁ではありえないと思います。 と言っても、BMの公式に語られている設定や歌詞、パフォーマンスについてではなく、ヴィジュアルな象徴を通して表現されている部分についてです。 BMのフォックス・ゴッドとブラック・メタルの悪魔主義、ペイガン・メタルの異教主義などとの関係や、

「スター・トレック」のテーマ

「スター・トレックのテーマの考察」に書いた文章を転載します。 「スター・トレック」シリーズ全体としての中心的なテーマは、一言で言えば、「あるべき人間性の追求」ということだと思います。 その「あるべき人間性」は惑星連邦の理念である「人道主義」と言い換えることもできるでしょう。 細かく展開すれば、「平和主義」、「同盟主義」、「利他主義」、「生命尊重」、「個の重視」、「異文化の尊重」、「多様性の尊重」などです。 また、「フロンティア精神」、「成長」、「自立」といったものも含