見出し画像

2020年のアメリカにおけるBlack Lives Matterが私にもたらした変化(1)

5月25日にミネアポリスで起きた、白人警官による黒人リンチ殺人事件。アメリカの人種差別の現状を知らない人から見たら、そんな時代錯誤な、と目と耳を疑うような事件。これをきっかけに、2013年の別の黒人少年殺人事件後から始まったBlack Lives Matterという黒人の命を真剣に考えよ、という運動がここへきて大きく膨れ上がった。黒人以外の人々の多くは、警官による黒人の偏見による暴力がここまですごかったということを、ジョージ・フロイド氏が殺害される動画を見るまで認識していなかった。しかし、あのまぎれもない8分46秒を目の当たりし、初めて理解し、動き出した人々もたくさんいる。プロテストは事件から2週間を過ぎた今日も、アメリカ各地で続く。

私は音楽大学に留学中に出会ったジャズミュージシャンである黒人男性と結婚して9年目になる。東南部のアメリカ第6位の都市で暮らしている。初めて渡米をしてから、18年という月日が流れた。

渡米前の高校出たての私は、アメリカには人種差別はもうほとんどなく、黒人も白人もヒスパニックもみんな仲良く生きているんだと思っていた。なんにも知らなかった。しかし来てみるとすぐに、それは全く違い、大学のカフェテリアでさえ、白人グループ、黒人グループ、アジア人、ヒスパニック、外国人とくっきりと分かれている。異人種で一緒にいる人たちをほとんど見ないのだ。これがアメリカの現実かと思い知り、さらに人種を問わずアメリカ人の友人が増えるにつれ、様々な事実がわかってきた。

はじめに暮らしていた街も南部の別の場所で、そこですぐに黒人の友達ができた。大学生だったから、二十歳前後の子達だが、その中の1人がある日「黒人はみんな警察が怖いものなのよ。警察には気をつけなければいけない、と必ず親に習うの」と教えてくれたのを、18年経った今も忘れられない。そのくらい衝撃だったから。守ってくれるはずの者達から、逆にリンチやレイプや逮捕されるかもしれないと恐れなくてはいけないというそんな世界がこの世にあるとは。平和ボケした日本から来た私には大きなショックだった。

その20年近く前の話が、今も変わっていないという事実。それから個人的にたくさん勉強してきたキング牧師やマルコムXらの公民権運動、1968年から、何十年経っているんだ?と半分内部にいる私から見ても、あきれるほどやっと訪れつつある変化。それが2020年のBlack Lives Matter率いるアメリカのプロテスト。日本のメディアなどがはじめに起こった暴動の部分ばかりを取り上げたように見えたが、それは全く正しくなく、暴動はほとんどの都市で最初の一夜だけであった。これは国全体でおこっている抗議運動(プロテスト)で、実際に今、数々の警察システムが各州で変わろうとしている。21世期に入ってからやっと訪れたこの変化は、やはりアメリカの歴史のアップデートという視点で見ると、やはり歴史的瞬間なのかもしれない。

このことを外国出身であり、黒人の家族がいる私のフィルターを通して見ていることを文章にしていきたいと思う。日本にいる方にはすごく遠い話に感じるかもしれないが、この今も歴然と残る差別という現象、それはアメリカ以外にもはっきりと存在しているので、普遍的に捉えられる部分もかなりあるのではないかと思う。そのことを全員で考えないと、差別は絶対なくならないと私は思う。プロテストは素晴らしいし、確実に変化をもたらしているが、それで差別が終わるわけではないから。外出規制まで出たコロナ禍も何処かへ行ってしまったかのように、アメリカは今プロテストで一色。この2週間ちょっと、毎日このことを考えて人に伝えて、だんだんすり減ってきてしまった。だから文章にしてもう少し消化できるといいなと思って、初めてnoteを書くことに決めました。(続く)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?