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#写真小説

 月が、ぽっかりと浮かんでいた。
 真ん丸だった。あぁそうか、今日は満月だったのか。
「月が綺麗ですね」
 と、呟いてみる。ひとりぼっちで。愛を伝えるべき相手は今、俺の隣にはいない。いや、これからもずっといない。
 愛する彼女。もう失ってしまった彼女。
 ささいな口論が、永遠の別れを生み出した。
 俺は空に浮かぶ月を見つめる。あの月のように美しい人。彼女の事を忘れる日など、きっと永遠に来ないだろう。
 それにしても、あぁ、見事に真ん丸だ。
 まるで。
 まるで、彼女を埋める時に掘った、穴のようだ。

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