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冥王星居住区に住む事となった。 光速船に備え付けられたコールドスリープ装置は、星への到着直前に自動的に俺を目覚めさせる。寝起きの、まだ重い瞼で船内を見渡していると、窓の向こうに浮かぶ薄茶色の星。まるで誰かに落書きされたかのようなハートマークのついたその姿が、視界の中でどんどんと大きくなっていく。 かつて惑星と呼ばれ、かつて惑星から外された星。 仕事で失敗し、こんな辺境まで飛ばされた俺にとっては、似合いの星なのかもな、と思う。 「どうしてそんなに暗い顔をするんだね君はせ
天地がひっくり返るような衝撃が僕を襲う。 嘘だ。嘘に違いない。 天の星々でなく、僕らのいるこの大地の方が動いているだなんて。 太陽が東から西へ進んでいくのは、太陽が動いているのでなく、この地がぐるぐる回転しているからそう見えるだけだって……そんな訳が……そんな訳が。 けれども、目の前の男が語る話には、なんだか、妙な説得力があって。 「どうだ。そろそろ俺の話を信じる気になったか? ……まだ厳しいか? お前は、これまで随分と狭い世界で生きてきたようだからな。でもな、これ
懸賞で、旅券が当たった。 南の島への一晩旅行が楽しめる、特別なパスポートだ。 手帳型ではなく、クレカよりちょっと大きいくらいのサイズのカードであり、その使い方は簡単で、ただ夜眠る前に枕の下に入れるだけ。 さっそく使ってみた。 枕の下に旅券をセットした状態でベッドに入り、目を閉じる。 ……そして気付けば、私は海岸に立っている。 着ていたパジャマはアロハシャツに変わり、周囲を見れば海、砂浜、ヤシの木とかパラソルとか小さなテーブルとかビーチチェアとかがあり、テーブルの
吾輩は猫である。 元々は人間であった。小説家を目指し懸命に執筆活動を続けていたがなかなか芽は出ず、時折やけになって酒に逃げ、また書き、酒を飲み、酒を飲み、酒を飲み、酒、酒、酒、酒……思い返せば俺は立派なアル中だったのかもしれないが当時はその自覚もなく、ただ飲む事だけを考えていて、気付いたら死んでいた。 どうして死んだのかはわからない。最期の日もいつもどおり酒をグビグビやってた事だけははっきりしていて、でもその後の肝心な死の部分があやふやで、けどなんか冷たかったような苦し