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2月18日 冥王星の日

 冥王星居住区に住む事となった。
 光速船に備え付けられたコールドスリープ装置は、星への到着直前に自動的に俺を目覚めさせる。寝起きの、まだ重い瞼で船内を見渡していると、窓の向こうに浮かぶ薄茶色の星。まるで誰かに落書きされたかのようなハートマークのついたその姿が、視界の中でどんどんと大きくなっていく。
 かつて惑星と呼ばれ、かつて惑星から外された星。
 仕事で失敗し、こんな辺境まで飛ばされた俺にとっては、似合いの星なのかもな、と思う。
「どうしてそんなに暗い顔をするんだね君はせっかく私の星に来たというのに」
 誰だろう。今話しかけてきたのは。窓の向こう、何か、大きなものが泳いでいる。あれは。なんだ。……鯨?
「鯨? ああまあそうだねそう呼んでくれても良いが」
 鯨みたいな大きなやつが、口を動かして、宇宙空間で声を出す。
「けれども私には君達から貰った名があるのだからどうせならそれで呼んでほしい。知らないかい? 私の名は、クトゥルフ領域。ようこそ私の星へ。仲良くしよう」

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