2月19日 天地の日
天地がひっくり返るような衝撃が僕を襲う。
嘘だ。嘘に違いない。
天の星々でなく、僕らのいるこの大地の方が動いているだなんて。
太陽が東から西へ進んでいくのは、太陽が動いているのでなく、この地がぐるぐる回転しているからそう見えるだけだって……そんな訳が……そんな訳が。
けれども、目の前の男が語る話には、なんだか、妙な説得力があって。
「どうだ。そろそろ俺の話を信じる気になったか? ……まだ厳しいか? お前は、これまで随分と狭い世界で生きてきたようだからな。でもな、これが事実だ」
僕は首を振る。それから窓の外を見る。地平線の向こうの太陽をじっと見つめる。
「ああ、そうだ、太陽の光量だって本来はあんなもんじゃねえんだ、直視したら目が潰れるくらいの、いや違う今のは忘れてくれ、いや違わないんだが、あんまり一度にあれこれ言ってもこんがらがるから今はとりあえず」
男の言葉を耳では聞きながら、目は太陽を見続ける。広くて平らな僕らの世界の、まっすぐな地平線の向こうを、東から西へ滑るように横へ横へ移動する太陽を。
「俺を信じてくれないかな、被検体68293dくん」
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