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百字小説

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100文字の小説 ※タイトルとハッシュタグは除き、本文だけで100文字 ※文字数カウントはnote執筆画面の表示を参照しています
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2024年2月の記事一覧

【重い瞼】  近頃夜更かしばかりしていたせいか、やたら眠くて瞼が重い。本当に瞼が重い。一分一秒経つ毎にずんずん瞼は重くなり、やがて重力に耐えきれず、俺の顔からぶちりと千切れ地面へ落下。そのまま地中へ沈んでいった。 #百字小説

【海底で魚がはねていた】  ちっぽけな舟で海を漂流中。陸地は見えず食糧は無く喉の渇きに海水を飲めば余計に喉が渇き、それでまた飲む。飲む。飲む。飲まれる事で少しずつ海はその嵩を失っていき、やがて消滅し、世界の全ては陸地になった。 #百字小説

【優しい両親と可愛い妹】  僕の父さん母さんはすごく優しくて、僕が望むものは全部くれる。この間もそうだ。「妹が欲しい」と僕が言えば、翌日には可愛い女の子が家に来た。でも妹はそれから毎日、「家に帰りたい」と泣く。ここが家なのに。 #百字小説

【瓜切り】  新しい爪切りを買った。パッケージで「瓜切り」と誤字ってるのが気になったが安かったので買った。  しかし安物のせいか全然切れない。諦めた俺が庭に出ると、家庭菜園のキュウリがめちゃくちゃに。誰の仕業だ。 #百字小説

【つま切り】  新しい爪切りを買った。パッケージで「つま切り」と誤字ってるのが気になったが安かったので買った。  しかし安物のせいか全然切れない。力を込めるとバチンという音、とほぼ同時に妻の悲鳴。爪は切れていない。 #百字小説

【猫の支配と人の役割】  猫が世界を支配した。  猫により人類は滅ぼされかけたが、とある家の飼い猫であったタマが、「人が消えたら誰が猫缶を開けるのか」と叫んだ。  そこでやはり猫により自動猫缶開け機が開発され、人類は滅んだ。 #百字小説

【緑色の魚】  緑色の魚が生えていた。  地面から。  草かと思った。ジョウロで水をやると、嬉しそうに揺れる。それで毎日水をやるようにしたら、魚はぐんぐん成長して大木のようにデカくなって、今じゃ世界樹と呼ばれてる。 #百字小説

【黄色い魚】  黄色い魚が光っている。  金魚鉢みたいな形の電球の中に入れられて、ぴかぴか光っている。電球の中は狭そうに思えるが、本人、いや本魚はいつものんきそうにヒレを揺らしながら、魔女の家の玄関を照らしている。 #百字小説

【赤い魚】  赤い魚は燃えていた。  元気とやる気に満ち溢れ心が燃えていたのだが、いつしか心の炎が体に移り、火の玉みたいな魚になった。住んでいる泉も自分の熱で温めてしまい、まぁそれが、あそこに温泉ができた理由だ。 #百字小説

【青い魚】  青い魚が空を泳ぐ。  川でも、海でもなく、晴れ渡った青い空を泳ぎ回る。  空と同じ色の魚は見つけ難く、だから誰も気付かない。ただ魚の泳いだ後には白い線が残り、誰かがそれを指して「飛行機雲」と言った。 #百字小説