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左手で、我が子の手を握り。 右手で、スマホを持ち。 そして私の目は、スマホの画面をじっと見つめている。 「あのさ僕さぁ、大きくなったらサッカー選手か漫画家かケーキ屋さんになるの」 「そう、いいわね」 息子の呼びかけに答えながら、私は思う。 スマホって便利だ。 スマホって素晴らしい。 人生の楽しさが、喜びが、この小さな機械の中にある。 「あっ! ねー、あの雲さー、怪獣みたい! 怪獣! 見て見て!」 「本当ね、怪獣みたいね」 息子の無邪気な声を聞きながら、私はスマ
2000年頃の事である。 未来人を名乗る男がいた。 男の話には妙な信憑性があり、勿論彼を疑う者もいたが、信じる者も数多くいた。 男は「タイムマシンが故障して未来に帰れなくなった」「すぐ戻るつもりで遡行届も出していないから救助が来ない」と言い、この時代に家も金もないと主張。そこで男を信じる有志の者達で生活費や物資、住む場所を提供し、彼を支援した。男はそのお礼として、未来の話を人々に語って聞かせた。 男の語る話は面白く、人々は喜んで彼を支援し続けていた。数年間の間は。