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スローリーディングそしてスローウォッチング

平野啓一郎さんの『本の読み方 スロー・リーディングの実践』を読みました。今年1番マーカーを引いた本かもしれません。とにかく心にグッとくる言葉が多く、せっかちぎみな私の人生において、ターニングポイントとなるような内容でした。

本を通して、平野さんはゆっくり本を味わうことの大切さを丁寧に解説してくれています。「速読」なんて言葉に呑まれて、色んな知識を入れなければ!と思ったこともありましたが、あぁやっぱ本ってゆっくり読んでいいんだ。と実は心の奥では自分はずっとそうしたんだという安堵感のようなものが、スーッと広がっていくような感覚を得ました。

平野さんも本の中で書かれていたけど、翻訳の仕事をしていると究極のスローリディングスキルが必要だと実感するこのごろ。

最近映像翻訳の仕事をはじめて、それが映像にも当てはまることを実感しました。バラエティ番組だったのですが、仕事として翻訳するとなると、何度も何度も同じ場面を見返します。スローリーディングならぬ、スローウォッチングです。

この発言の意図はなんなのか、この行動はどこに繋がるのか、文化的な違いを超えてこの面白さを伝えるにはどうしたらよいか、イチ視聴者として番組を楽しんでいた時とはまた全然違った視点でじっくり番組と向き合います。

するとあることに気づいたわけです。芸能人の方々のトーク力というか場の雰囲気を即座に読み取って、ちょうど良い間で発言し、それらが編集されて番組が作られているということがいかにすごいということが。特に司会を担当するとなると、声の音量や顔の表情を巧みに使い分けて番組をまわしていることがよくわかります。普段番組を見ているときはテレビの前であーだのこーだの好き勝手言っている私ですが、訳し終えた時にはそれぞれの個性がもう魅力的で出演者全員のことが大好きになっていました。

ゆっくりじっくり向き合う事でしか見えてこないものがある。翻訳という作業は時間はかかるけどそれに見合うだけの洞察力を深めてくれるなぁ、だから楽しいんだなぁ、なんて改めて翻訳という作業の魅力をしみじみと感じているところです。

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