間違った使い方してませんか?ビジネスモデルキャンバス(前編)【フレームワーク#14】
はじめに
みなさんこんにちは、新記事業コンサルタントの藤塚洋介です。
今回ご紹介する「ビジネスモデルキャンバス」Business Model Canvas(BMC)は、あなたのビジネスアイデアを具体化し、成功へと導くための強力なツールです。
非常に有名なフレームワークで、事業家の皆さんならほとんど知っていることでしょう。
まるで建物の設計図のように、ビジネスの全体像を視覚的に捉え、関係者全員で共有・議論することができます。
私もたくさんのフレームワークを使いますが1、2を争うくらい大好きです。自身の経験からも「使いこなせば。このフレームワークだけで新規ビジネスが作れる」と本気で思っています。
このビジネスモデルキャンバスの実践ノウハウを全3回でお伝えしていこうと思います。今回の前編では初心者の方向けの基本と、陥りがちな「間違った使い方」を知ることで、フレームワークに縛られない状態を目指しましょう。
基本は知っているよ、という方は「間違った使い方」とは?から読み始めてもいいと思います。
1.ビジネスモデルキャンバスの基本を理解する
ビジネスモデルキャンバスとは?
ビジネスモデルキャンバスは、一枚のキャンバスに9つの要素を書き込み、ビジネスの全体像を可視化するフレームワークです。
新しいビジネスの立ち上げはもちろん、既存事業の分析・改善、競合分析など、様々な場面で活用できます。複雑なビジネスモデルもシンプルに表現できるため、チーム内での共有や議論もスムーズになります。
ビジネスモデルキャンバスの役割
9つのブロックでビジネスモデルをビジュアル化することで、関わる人々の共通言語にすることができます。
ビジネスモデルキャンバスを使ってまず以下のことができます
・ビジネスモデルを伝える
・ビジネスモデルを評価する
・ビジネスモデルを変革させる
新規事業を始める際の青写真、既存事業の課題特定、新しい成長戦略策定、競合分析など、多岐にわたります。
例えば、顧客セグメントを再定義することで新たなニッチ市場を開拓したり、価値提案を見直すことで競争力を強化したり。まさにビジネスの羅針盤として、進むべき方向を示してくれます。
9つの構成要素を詳しく解説
TESLAのビジネスモデルキャンバスの例
イーロン・マスク氏が率いる、電気自動車メーカーのテスラ(Tesla, Inc.)のビジネスモデルは、「環境に優しい技術」「最先端の性能」「エコシステム構築」に特化。直接販売やバッテリー技術の活用、そして多角的な収益モデルによって、業界全体をリードする存在となっています。
BMCを使うことは、新規事業のアイデア初期ではどんな効果があるのか?
さて、BMCを使うことは、新規事業のアイデア初期ではどんな効果があるのでしょうか?
まず、ビジネスモデルキャンバスを活用して、顧客セグメント、提供価値、収益構造などの仮説を視覚的に整理することで、全体を俯瞰できることが大いに役立つのです。
ビジネスアイデアの初期で、上記のテスラの事例のように埋ることは少ないでしょう。しかし、顧客セグメントと提供価値が明確になっても、事業として成り立たないケースもいくらでもあります。
アイデアが平凡でも、コストが合わないから、とか1社では難しいとか、そういったことが原因でこれまで誰もその事業が作れなかったのかもしれません。
埋まっていないブロックから、今後の検証項目や計画の参考になる。
または浅い書き込みに気づくことで、もっと深掘りしないといけない課題が明確になる。例えば、キーリソースはわかっているけど確保するためのパートナーが不在で探索する必要がある。などに気づくことが重要なのです。
2.ビジネスモデルキャンバスの「間違った使い方」とは?
ビジネスモデルキャンバス(BMC)は有名であるために多くのビジネスマンが知っているのが実情です。
しかし、これを使いこなしている人は少ないように思われます。
BMCは新規事業や戦略設計のための強力なツールですが、使い方を誤ると逆効果になることがあります。以下は、BMCの悪い使い方の代表例です。
表面的な記入で終わる
事業アイデアの規定フォーマットになっているになっている企業で多いのがフォーマット化した側はBMCをある程度理解しているものの、担当者や審議する側が十分に理解していないケースです。
BMCをただ埋めるだけで、深い議論をせずに進めるのは典型的な失敗です。顧客ニーズや競合分析を十分にせず、適当な言葉で記入してしまうと、実際の戦略に結びつかず空論に終わります。
最悪のケースは提出用に穴埋め的に使うだけで、普段の活動で全く使わない状況になってしまうのです。
「価値提案」部分に機能や商品を並べる
間違った書き方で多いのは、「価値提案」部分に機能や商品を並べてしまうことです。
上記のテスラのケースを見ていただければわかりますが、「電気自動車」とか「大型タッチパネル」と書いてしまった人は改めましょう。
その機能にはユーザーはどんな価値があるのか?を言葉にするのです。
私もテスラの実車を見たり触ったりしたことがありますが「ボタンがほぼなくタッチ操作のみ」「車中泊でエアコン使える」「大ディスプレイでYoutubeを楽しめる」「後席がフラットになってベッド化」など意外にキャンプに適しているし、使い勝手は、もはや車というより「大きなスマホ」と感じるくらい認識の変化を感じました。
このような感じ方は、「機能」だけでは表れませんよね。
全ての要素を一度に完璧に埋めようとする
BMCは仮説検証のプロセスを通じて更新していくツールです。
一度で完璧を目指すと、時間を無駄にし、柔軟性を欠く原因になります。
少なくとも下記の7つのシーンでアップデートし続けるものになります。
事業開発ではずっと使うと思っていると良いでしょう。
1.ビジネスアイデアを考える時
2.顧客の問題を特定した時
3.課題解決方法を考えた時
4.販売方法を検討する時
5.採算性を考える時
6.事業計画を作る時
7.拡大フェーズで複数部署と連携する時
チーム間で共有しない
BMCは議論と共有が重要ですが、一部のメンバーだけが作成し、他の関係者と共有しないのも間違った使い方です。これでは合意形成ができず、実行フェーズでの齟齬を招きます。
・合意形成のために内容の重なっている別の資料を作る
・自分の作業のために別の資料を作る
このようなことに気づいたら、ビジネスモデルキャンバスで代用できないか考えてみてください。フレームワークの最も良いところは「共通言語化」とも言われています。
チーム間の説明が早くなり資料ばかり作ることを防ぐのです。
また、同じフレームワークに残すことで、後で見返した時や別の方に説明入らずで伝えることができます。
上記のようにならないように少なくともチームメンバーやマネジメントの方全員で基本は学んでおくとよいでしょう。
一度作った仮説の前提に固執する
BMCに書いた仮説を絶対視し、市場調査や顧客フィードバックで検証しない、または検証しているのに、初期の仮説に固執すると、誤った方向に進むリスクがあります。
先ほどシーン別に利用することを書きましたが、現場の事実を大事にすることを忘れないようにしましょう。
NEXT >中編につづく
いかがでしたか?
次の記事は、新規事業のアイデア出しを「既存事業の市場を変えず」に行う具体的方法をご紹介します。お楽しみに!
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