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学校では教えてくれない 桃太郎式チーム作りとは? 【診断シート付き】

新規事業立ち上げは、企業にとって成長と革新の源泉です。
しかし、その道のりは決して平坦ではありません。

新規事業の成功率はわずか10%〜30%とも言われ、この低い成功率の背景には様々な要因がありますが、今回は特に担当者が直面する最大の課題の一つ

「十分なチーム体制を整えられない」

という問題に焦点を当てます。

皆さん、こんにちは。
MOONSHOT WORKS株式会社の藤塚洋介です。

コンサルタントとして、数多くのプロジェクトに携わってきた経験から、今日もある「あるある」な課題についてお話ししたいと思います。


社内起業家のあるある「何でも屋」「24h/365日」

多くの新規事業担当者は、こんな状況に身を置いているのではないでしょうか。

  • 市場調査、技術調査、ユーザーインタビュー、データ分析、事業計画策定、報告書作成...やるべきことが山積みで、24時間働いても時間が足りない気がする

  • 「スタートアップに負けないなら24h/365日それが当たり前」と言われてなぜか納得してしまっている

  • 専門知識が分かる人が不足している

このような状況は、「社内に仲間がいない孤独感を感じる」ことに繋がっています。新規事業の世界では珍しくないことですね。

私自身、ある時、新しいサービスの開発プロジェクトを任された時に同じような経験があります。

技術調査からユーザーへのヒアリング、事業計画の策定をこなし、パートナーとの契約交渉、マーケティングイベントでは自らが登壇し、そのデータ分析まで、全てを一人で担当していました。

昼夜を問わず働き、週末も返上して取り組みましたが、専門知識の不足や時間の制約に常に悩まされていました。
上司に相談すると、もう少しプロジェクトが進んで予算がついたら増やす、と言われます。

そうはいっても、実際は今こそ仲間が欲しいものです。

なぜこのような状況に陥るのか?

1.リソースの制約
スタートアップの初期の平均チームサイズは2.5人程度と言われています。
大企業の新規事業プロジェクトでも初期段階では1人、さらには兼務ということも珍しくありません。

2.専門性の壁
新規事業は既存事業と異なる専門スキルが必要となることが多く、社内で適切な人材を見つけるのが困難な場合があります。

例えば、技術部門で新規事業を立ち上げる場合に、そもそもビジネスの専門家が全くいないことに頭を悩ませているケースはよく見られます。

3.スピード要求 
事業開発のスピードが遅い企業は成功確率が低いという結果が出ています。

例えば、アイデアの着手段階ではどの企業より早くスタートしたものの、ローンチまで時間がかかりすぎて他社に先を越されたというケースは多いのです。

「苦節何年、○社より私の方が先にやってた。先見があったのに…」
と悔しがる言葉を何度も聞いたことがあります。

特にフィンテックやVR、ChatGPTなど近年は技術が急速に進み、悔しい思いをした起業家も多いはずです。

4.組織の理解不足
企業の70%以上が新規事業の重要性を認識しているにもかかわらず、実際に十分なリソースを割り当てているのは30%程度に過ぎないと言われています。

どうしても予算配分や人員割り当ては、既存事業優先の傾向が強く、さらには「ROI重視」の既存ルールで予算を取らなければいけない企業も多いでしょう。

これらの要因が重なり、担当者は「全て自分でやらなければならない」という「自前主義」の思い込みに陥りがちなのです。

しかし、この自前主義は長期的には「スピードが落ち」「ナレッジが貯まらない」大きな落とし穴となります。

課題克服のためのステップバイステップガイド

では、どのようにしてこのチーム課題を克服すべきでしょうか?
以下に、実践的なステップを示します。

現状診断&ステップガイド ©️MOONSHOT WORKS

Step 1: 現状をチェック・分析する

まずは自分の状況を客観的に分析しましょう。
以下のチェックリストを使ってYes/Noで現在の課題を明確にしてください。

1.新規事業開発のプロセスについて体系立てて理解している
2.必要な技術についての専門性を理解している
3.新規事業開発や起業をゼロイチからマネタイズまで全て経験したメンバーがいる
4.必要な技術についての専門家がいる
5.初めての顧客でも躊躇せずに話せるメンバーがいる
6.ターゲット顧客にタッチポイントがある、または容易にアクセスできる
7.チームとして社外に多様な人脈がある、または社外人脈が多い人がいる
8.役員クラスの意思決定者に直接のコミュニケーションルートがある


3つ以上「NO」がある方は、特に危機を感じて速やかに対処が必要です。
次からのステップで詳細を見ていきましょう

現状診断シート

Step 2: 専門家の知見を活用する

専門性が高い領域を自分でマスターしようとするのではなく、各分野の専門家とコラボすることも重要です。

一方、ある程度分野の知識・理解がないと、全て専門家の言う通りになり主体性がなくなってしまいますので、このバランスを取るのが難しいのです。

<実践ガイダンス>
🔳1.新規事業開発のプロセスについて体系立てて理解しているが「Yes」で3.新規事業開発や起業をゼロイチからマネタイズまで経験したメンバーがいる,が「NO」の場合

この場合、知識を知っていても実践では経験に基づく応用ができないことがボトルネックになります。
新規事業開発を「ゼロイチからマネタイズまで全て経験した専門家」にアドバイザーなどで支援していただくと良いでしょう。

🔳2.必要な技術についての専門性を理解しているが「Yes」で4.必要な技術についての専門家がいる、が「NO」の場合

この場合、外部専門家に顧問的にプロジェクトに入っていただき、あなたの知見をサポートいただくのが良いでしょう。

🔳1,2が「NO」の場合

この場合、いきなり外部に頼らずに、チーム内にナレッジを貯める必要があります。まずは自分が目利きできるまでの知識をつけないと、専門家と対等に話せません。

イベントやセミナーなどを受講し、出来るだけ生きた知識を入れるようにしましょう。社外プロジェクトに入り実践で学ぶのも良いと思います。

専門家の活用ポイント

Step 3: 社外との”直タッチポイント”を作る

No.5〜7のチェック項目「社外人脈」はあらゆるシーンにおいて役立ちます。

初期のユーザー調査のインタビュー対象になったり、お互いの強みを活かして社内の常識を打ち破るアイデアも生まれやすいのです。

<実践ガイダンス>

🔳5.初めての顧客でも躊躇せずに話せるメンバーがいる、が「NO」の場合

チームメンバーが顧客と話すのが苦手という理由で、リサーチをデスクトップで済ませたり、外部委託で済ませてしまうシーンも見られます。

ですが、顧客視点でビジネスを考える場合、担当者自ら現場に行き、体験したり、観察する中での気づきが非常に重要です。

ここを外注するのは「桃太郎が鬼退治を外注」するようなもの。
出来るだけ避けたいところです。

どうしても苦手な場合はインタビュースキル基礎を学び、時間をかけてもご自身で行うのをお勧めします。最初はプロの人に側にいてもらうのも有効でしょう。

🔳6,7.ターゲット顧客にタッチポイントがある、または容易にアクセスできる、チームとして社外に多様な人脈がある、または社外人脈が多い人がいる、が「NO」の場合

多様な社外人脈があると、ビジネスアイデアが生まれた時に、最初に意見を聞く対象にもできるでしょう。

何よりも様々な業界のケースと組み合わせることでアイデアも生まれやすくなります。

また、社内に営業組織がある場合、タッチポイントにはなりますが、営業事情が優先される為、インタビューのアポイントに時間がかかったりするケースも多々みられます。

理想は新規事業部門が「直接タッチできる人脈」を普段から意識して作っておくことです。
インタビューがきっかけで協業に発展するケースもあるので、機会を最大限に活かしましょう。

社外の直タッチポイント

Step 4: 社内の巻き込み

新規事業を進めるのには役員クラスの協力を得ることが欠かせません。
商品は良くても、お客様がついても、上層部の理解が得られずに日の目を浴びなかったプロジェクトはいくらでもあるのです。

🔳8.役員クラスの新規事業の意思決定者に直接のコミュニケーションルートがあるが「NO」の場合

社内政治は上司に任せている、商品が良ければ売れると思っている方も少し耳を傾けてください。

新規事業も既存事業と同じ審議者による審査をしている場合、極端に成功確率が低くなります。

役員は1日何度も既存事業の意思決定をしています。
既存事業の意思決定は、確実性の高いエビデンスで判断しますが、新規事業はエビデンスがない、または低い中で判断する必要があり、切り替えが難しくてあたりまえなのです。

直接意思決定者にコミュ二ケーションルートを作れば、情報をダイレクトに伝えることで余計なバイアスを防げ、大変リーチになるのです。

社内の巻き込み

桃太郎から学ぶ、段階的なチーム作りとは?

桃太郎も最初からフルメンバーではなかった

ここまで理想を説明しましたが、実務では一度に完璧な社内チームを作ろうとせず、段階的にチーム拡大していく戦略が有効です。

以下は仲間を段階的に巻き込んでいく「チーム拡大ロードマップ」です。

フェーズ0 (事業ドメイン)
起案者1名、責任者、役員、フェーズ3まで経験があるメンター

フェーズ1 (事業アイデア、仮説構築)
+2〜3名 社外人脈があるメンバーを加える

フェーズ2(仮説検証、CPF※)
+1名 技術専門領域を加える

フェーズ3(プロトタイプ制作、PSF,PMF※
プロジェクトマネジメント、マーケティング、マネタイズ領域の専門家を加えていく

※は文末に解説があります。

事業開発フェーズごと最低限のチーム構成
スタップバイステップでチーミングしていく

ポイントは、全体を俯瞰してアドバイスできるメンターに入ってもらい、メンターには、「どんな仲間を」「どのタイミングで」強化するべきかのアドバイスをお願いするのです。

桃太郎も、「鬼退治をする」と決めた時は一人でした。

「おじいさん」と「おばあさん」という絶対的な支援者がいただけです。
そして道中で徐々に仲間を増やしていきました。

もし、最初からあんなに大勢の仲間がいたら出発の準備に時間がかかって、鬼退治が間に合わなかったかもしれません。

新規事業でも序盤フェーズで初心者が沢山いても、どのように進めていいかわからず、合議制、多数決になりがちでありきたりなアイデアになったり、停滞するケースもよく見られます。

桃太郎の「鬼退治」と同じように、皆が共感する「ビジョン」にメンバーを巻き込んで徐々に増やしていけばいいのです。


まとめ 仲間は社外にもいる

いかがでしたか?

最後に、皆さんは決して孤独ではありません。
社外には同じように切磋琢磨している仲間が沢山いるので、会社を超えてつながるのがおすすめです。

そして、実は社内に仲間がいないようで探してみれば必ずいるもの。
桃太郎のように、求めればいつか現れるのです。

それでは、診断シート、ぜひやってみてくださいね。


新規事業・社内起業家のこんなケースも取り上げて欲しい、もっと詳しく聞きたい。という方はコメントか、MOONSHOT WORKSのHPからお問い合わせくださいね。

※用語解説:新規事業開発のフェーズを表す「CPF」「PSF」「PMF」
🔳CPF:Customer Problem Fit(カスタマープロブレムフィット)
CPFは、顧客の問題やニーズを把握しているかを示す指標です。新規事業の成功において、まず最初に重要なのは、ターゲット顧客が実際に抱える課題を正確に理解することです。CPFが高い状態は、顧客のニーズを的確に捉え、それに対する適切な解決策の検討に入る準備ができていることを意味します。

🔳PSF:Problem Solution Fit(プロブレムソリューションフィット)
PSFは、特定の顧客問題に対して提供される解決策が適切であるかを示します。CPFが顧客の問題に焦点を当てているのに対し、PSFはその問題に対する具体的な解決策の妥当性を評価します。PSFが高い状態は、提供するソリューションが顧客の問題を効果的に解決できることを意味します。これにより、市場での競争力を確保しやすくなります。

🔳PMF:Product Market Fit(プロダクトマーケットフィット)
PMFは、製品やサービスが市場のニーズに適合しているかを示す指標です。新規事業が市場で成功するためには、提供する製品やサービスがターゲット市場にとって魅力的であり、受け入れられるものでなければなりません。PMFが高い状態は、製品やサービスが市場で強い需要を持ち、顧客に広く受け入れられていることを意味します。

用語解説


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