チュバキュローシスの卵

 私が庭で一生懸命にチュバキュローシスの卵を洗っていると、近所の子供がきて言った。
「それ、チュバキュローシスの卵だろ」
「よく知ってるね」と私は返した。「危ないから向こうへ行き」
「お父さんが、チュバキュローシスの卵なんか洗ってる人には近寄るなって言ってた」と子供は言った。
「だから向こうへ行きってば」
「言いふらしてやる、この家はチュバキュローシスの卵なんか洗ってるぞって」
 私がどう言い返そうか考えていると、その子の父親らしき男が慌てた様子で走ってきた。「何してるんだ!」と彼はその子に言った。
「お父さん、見て! この人、チュバキュローシスの卵を洗ってるんだ!」
「だから、この家には近寄るなって言っただろ!」とお父さんは物凄い形相で言った。そしてこちらを一瞥すると子供を抱えて走り去った。
 私がなおも一生懸命にチュバキュローシスの卵を洗っていると、しばらくして保健所の二人組が防護服姿でやってきた。
「お前またやってるのか!」と保健所の人は怒った。「やめろって言っただろ!」
 そして霧状のものをあたり一帯にこれでもかというほど撒き散らして帰って行った。これではもうチュバキュローシスの卵は孵らないだろう。私が途方に暮れているとパトカーが数台家の前に停まり、警官たちが降りてきた。
「お前いい加減にしろよ」と警官は言った。「いい加減逮捕するぞ」
「でも、どういう罪状でだよ」と私はいつもの科白を言った。「チュバキュローシスの卵を洗っちゃいけないなんて法はないだろ」
「ふざけるな」と別の警官が言った。「法解釈なんか、その気になればどうにでもなるんだぞ。これが最後の警告だからな。次はないぞ」
 逮捕されてはたまらない。私はまた新しい別の卵を探し始めなければならない。いつもこの繰り返しなのだ。


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