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反復は稽古にあらず

私たちは何かを覚えるのに丸暗記と反復を用いてきました。
掛け算九九を延々と唱えてみたり、同じ漢字をノートにひたすら書き写してみたり、反復によって体に刻み込んできました。
では武道の稽古はどうでしょう。
何百回もの受け身、素振り、技の繰り返し、考えなくても同じ動きができるようになるまで反復します。
それが間違っているとまでは言わなくても、正しくないと言われたらどう思うでしょう。
自分の積み重ねてきたことが否定されて反発する気持ちも芽生えるかもしれません。

反復は稽古ではありません。
同じことを繰り返すだけでは人の成長は頭打ちになります。
もっと言えば時間の無駄です。
本当に必要なのは試行錯誤です。
試行錯誤を繰り返すには高い目標が必要です。
漢字を百回書くとしても、字を綺麗に書けるようにするという目標と、書き方を覚えるという目標では過程も結果も大きく違います。
10回で覚えられる人には残り90回はただの無駄な作業ですが、より綺麗な字を目指すのであれば100回でも足りないかもしれません。
同じ形に書き続けている限りは決して上達しません。
文字の形の正しさだけでなく、鉛筆の持ち方や力の掛け方など、様々な要素を変えていく必要があります。
反復される100回よりも、都度異なる狙いで行われる100回の方が多くの学びを得ます。
全ては失敗かもしれませんが、失敗もまた経験です。

繰り返すだけでなく、繰り返すたびに変化を感じること、変化を生み続ける為に繰り返すこと、それが稽古というものなのです。

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