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雛型に溺れる

商品企画を整理するには商品企画書というものを作ります。
業界の違い、企業の違いで形も目的も様々です。
投資や収益を重視するものもあれば情緒的なストーリーを重視するものもあります。
社内的な合意を目的としたものもあれば対外的に発信する為のものもあります。
自社の特性に合わせることで効率的かつ効果的なものになりますので、各社それぞれの商品企画書の雛型を持っています。

雛型がある、定型があるというのは作業者にとっては安心です。
全体のボリューム感が想定でき、完成までの時間も読めるからです。
ところが雛型も良し悪しで、油断をすると雛型の為の論理展開になってしまう恐れがあります。

例えば社内で説明する時には3Cの形がスムーズです。
市場の動向から始まり、競合の取り組みを説明して、自社の戦略を語るという流れを作るとします。
環境の話、競争の話、自社の取り組みという大枠から話を絞り込んでいくという点では分かりやすい雛型です。
一方で、この順番は一律とは限りません。
競合が明らかであり、その取り組みに顕著な変化があるなら競合から伝えるべきですし、独自性を強く主張するなら自社から語った方が印象的です。
逆に独自性を伝えたいのに競合から話し始めると、同じ土俵に引っ張られるリスクが生じます。
伝え方の構造、伝わり方の構造は目的によって変わるのです。

雛型の危ういところはその便利さにあります。
便利であるということは、ある場所について考える必要がないということです。
雛型があるが為に雛型以外の展開を考えなくなってしまうと、本来の目的を達成することよりも雛型に合わせることが優先されてしまいます。
効率の為に質を落とすリスクとなるのです。

企業によってはこの雛型が定まらず、毎年のように変える場合もあります。
それは現場レベルでは混乱に見えるかも知れませんが、状況変化に対する試行錯誤なのかも知れません。

雛型は便利、ただし便利さは思考の停止を生むリスクがある。
それを忘れないようにしましょう。

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