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[小説・ユウとカオリの物語]環境の変化 │ユウ目線7話

「ユウさんお疲れっした!一緒に仕事できるなんてなぁ、俺、嬉しいっすよ!」

 この会社に誘ってくれた友達のシュンさんは、僕より一つ上。だけどなぜか昔からお互い敬語で。ぎこちない仲なのかと言えばそうではないし、不思議な仲だよな。でも僕がしんどそうな時は朝からしょーもないジョークをLINEしてきたり。ほんと、気さくで裏表のない良い人なんだよな。前の事、何にも聴いたり言ってきたりしないけど、メンタル下がりまくってしんどい内容のSNS書いてたのをずっと読んでくれてたみたいだし、僕のこと心配してくれてたんだろうな。ありたがいよな。

「シュンさんお疲れさま!シュンさんもだけどさぁ、この会社、気さくな人多いよねぇ。みんななんて言うか、人懐っこいっていうかさ、裏表ないよね!」

「あ、それはそうですよ!大体社長があんなですから(笑)俺も入社してまだ半年ですけどね、なんていうかもう、ずっとここに居る人みたいな扱いですよ~。先輩にプログラム、偉そうに教えちゃったりしてますから、あはははは・・・」

 新しい会社は、ほんとに良い人ばかり。人間関係に悩まなくていい組織なんて僕の人生上、初めての事だった。前の会社はその逆で、みんな心では何を考えてるのかさっぱりわからなくて、不安しかなかった。裏表も見え隠れして。嫌だったよなぁ。それ考えるとこの会社は、社長も上司も同僚も、みんな人懐っこくて。思い切ってここに転職してきてほんとよかった。僕の人生も上向きになってきたのかな。

「そういやユウさん、新しいプログラミング、勉強始めたんですって?」

「そうなんですよ。WEB系のね、プログラム。ずっと興味あったんだけどね。たまたまBarで知り合った女の人が元ICM社のSEで。今はフリーでSEもやりながら、マンツーマンのプログラミング教室もやってるって言うから。教えてもらうことにしたんだ」

「相変わらず勉強熱心っすよねぇ!俺も見習わなきゃ!」

「シュンさんはもう十分でしょ、あははは」

 そうだ。この環境の変化って、思えばカオリ先生と出逢って、プログラミング教室に通い始めてからだよな。僕の周りになんだか今まで出会ったことのないような、人懐っこい良い人達に恵まれるようになったんだよな。

カオリ先生、僕の運命の人ならいいな......

「え?ユウさん、今なんか言いました??」

「あ!いや!何でもないっす!あはははは!」

「変なの!ユウさん、今日は早めに寝て下さいよ(笑)じゃ、帰りまーす、お疲れっしたー」

「そうだね、ありがとう!お疲れでした!」

 僕はカオリ先生のところに通い始めてから、レッスンが終わってカオリ先生と色んな話をするようになってた。カオリ先生も自分のことや仕事の事、学問的な話まで色んなことを話してくれる。博学なんだよな、カオリ先生。話に知性が溢れていて、ほんとに楽しい時間なんだよ。だけど僕はと言えば、良い会社に入って人にも恵まれだしてるけれど、ずっと何とも言えない不安が心にはあって。カオリ先生にはつい、不安な話をしてしまうんだよな。でもそんな僕の話をいつもカオリ先生は、少し顔を右に傾けて、静かに優しく聴いてくれている。

 その姿を思うと、不思議に不安は和らいだ。

 そう...…そんなカオリ先生のことが僕は、いつしか心から離れなくなっていたんだ......

読んでくださりありがとうございます。
2人でそれぞれの目線から、2人の物語を書きあっています。
随時マガジンにアップしていきますので、
良かったら最初から読んでみて下さいね。
ユウとカオリの物語|https://note.com/moonrise_mtk/m/mafeab246795b


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