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ユウとカオリの物語

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LGBTQ+当事者カップルの2人が描く恋愛小説。ユウ目線でのお話と、カオリ目線のお話を2人で書きあっています。セクシャルマイノリティの世界ではない、ごく日常の中で出逢った2人の物…
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#LGBT小説

[小説・ユウとカオリの物語] 初めての幸せ │ユウ目線12話

※前回はカオリ目線のこちら  僕はとっても心地いい夢を見ていた。カオリが僕をぎゅっと抱きしめて、頭を撫でながら鼻歌を歌ってる。なんの歌だろう?あぁ、早くキスしてくれないかなぁ... 「唇、伸びてるわよユウ......どんな夢見てるのかしら?」  頭をポンポンされてびっくりした。あ、また寝ちゃってたんだ僕。 「あ、ごめん、マジで寝ちゃってた」  起きると僕ら以外のお客さんは誰もいなくなっていた。 「あれ?もう閉店?僕、結構寝ちゃってた?え、もしかして変な顔してたの僕!?」

[小説・ユウとカオリの物語] 月はずっと綺麗でした │ユウ目線11話

 あの日の僕は、仕事でとても疲れていた。以前カオリさんが「魔の5時過ぎね」と言って笑いながら教えてくれたんだけど、僕はいつも夕方5時過ぎになると、疲れたとかしんどいですとか、憂鬱なLINEを送ってるみたいで。あの日も僕は夕方、カオリさんに何度もLINEしてしまっていた。 「あぁ......もう嫌われてるかもな......だれもあんなメッセージ送ってこられて、嬉しかないよ。ダメだな、僕。なんでこうなんだろ。カオリさんは、面白いわよって笑ってくれてたけど、きっといつか嫌がられる

[小説・ユウとカオリの物語] 自己紹介 │番外編

 どうも、ユウです。とうとう僕の告白まで来ましたね。カオリに1度振られた時は、実は一晩だけ落ち込みましたけどね。「マゼンタと青」のおかげで翌朝には前向きになってました笑 だってそれって恋の色じゃん!みたいな!だけどなぁ、愛の色はマゼンタと青、だなんてさ!その愛情表現がサピオセクシャル的にはもう、胸を打ち抜かれた感じがしたんだよ。うんうん。あ、サピオセクについてはまた、追々書いていこうと思いますね!  でね!カオリの素性がわかったところで!今日は僕とカオリの自己紹介を書いてお

[小説・ユウとカオリの物語] 告白 │ユウ目線10話

恋愛はもう、やりきったの......  カオリさんの突然のカミングアウトに僕が、「知ってましたよ」と言った時のカオリさんは、とてもびっくりしていた。そしてこの前のレッスンの日も、種明かしで「ノンケの人はノンケって言わないですよね~」なんて僕が言って、2人で大笑いをした。カオリさんとはあれからもそんな、穏やかな優しい関係が続いてる。だけど...... 傷つく覚悟、か......  僕はカオリさんが言ったその言葉がずっと、心から離れなかった。カオリさんはずっと僕を気にかけて

[小説・ユウとカオリの物語] カミングアウト │ユウ目線9話

「実はわたし、LGBTQ当事者なの。パンセクシャルってやつかな。恋愛において男女の区別がある感覚がわからない」 「......えぇ、知ってましたよ」  僕がカオリさんのところに、プログラミングの勉強に通いだしてからしばらくした頃のこと。あの約束の日にカミングアウトしていた僕は、レッスン後の雑談の中でいつしか、過去の恋愛のことや、今の自分のジェンダーに対する葛藤の話なんかを、なんでも話すようになっていて。あの日も、昔一度だけ付き合ったことのある彼女の話をしていた。 「僕は

[小説・ユウとカオリの物語] 傷つく覚悟  │ユウ目線8話

勇気ってね、 傷つく覚悟のことよ。  カオリ先生とはあれからレッスンの予約連絡の為に交換したLINEで、他愛もないやりとりを時々するようになった。先生は仕事でSNSやブログなんかもやっていて、僕はそれらを毎日チェックするのが楽しみだった。もちろん僕の事だ。過去の投稿も全部読んださ。この前「全部読みましたよ!」って言った時のカオリ先生、びっくりしてたけどなんだか嬉しそうだったよな。 「えーっ!?全部読んだの!?そんな人初めてよ(笑)びっくりするじゃないの」 「え、そんな驚

[小説・ユウとカオリの物語]環境の変化 │ユウ目線7話

「ユウさんお疲れっした!一緒に仕事できるなんてなぁ、俺、嬉しいっすよ!」  この会社に誘ってくれた友達のシュンさんは、僕より一つ上。だけどなぜか昔からお互い敬語で。ぎこちない仲なのかと言えばそうではないし、不思議な仲だよな。でも僕がしんどそうな時は朝からしょーもないジョークをLINEしてきたり。ほんと、気さくで裏表のない良い人なんだよな。前の事、何にも聴いたり言ってきたりしないけど、メンタル下がりまくってしんどい内容のSNS書いてたのをずっと読んでくれてたみたいだし、僕のこ