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窓から覗いてくる月

部屋の窓から月が見えるんだが、本を読むときも日記を書くときも、いつも覗いてくる。

なんでも見てくるのだ。

人に見られたら恥ずかしい恋日記から何から何まで見られてきたから、もう、今さらどうってことはない。


そういうわけで私は、
月と一緒にこの紙上を散歩することにした。


涙を流す日に限って煌々とスポットライトを当ててくるし、

返信が来ない日は今、彼は何をしているのか覗いてきて と月に言う。


さぁ寝るぞと仰向けになれば、
真上からまじまじと見てくるもんだから寝れやしない。



そうやって月と戯れてきた。



だがある時、部屋の模様替えをして、月が見えない配置になった。それから月を見ることがほとんどなくなった。


私の中から、月が消えていった。


すると不思議なことに、周りから「月だよね」と言われるようになった。どうやら、性格や雰囲気がそうらしい。


なんだ、いつの間にか月が私に乗り移ったのか。


つまり私は、寝ようとしている人にまじまじとピカピカと光でも当てているのか?



私は、口数が多い方でも太陽のように燦々と照らすような笑顔もない。
だけれども、暗闇にいるような迷える誰かの心に、そっと灯りを傾けることはできる。


そのことから、月 と呼ばれるようになった。



久しぶりに月を見上げた。



あなたは私で、私はあなた


一緒にこの紙上を散歩しよう。


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