読書記録「ラブカは静かに弓を持つ」大人になると、何でも趣味になっちゃうのかな

安壇美緒さんの「ラブカは静かに弓を持つ」を読み終えました。スパイ小説と音楽小説を掛け合わせた新感覚のお話でした。

前半はゆったりじんわり不安が広がっていくような感じ。後半ははらはらするような展開もあって読みやすかったです。物語を通して主人公が変わっていく姿に小さな灯りのようなものを感じた話だった。第一楽章と第二楽章に分かれていて、第一楽章は比較的ゆっくりペースで読んでいたのに、第二楽章読み始めたら止まらなくてちょっと読んで寝るつもりが深夜2時まで読んでしまった。これから読む人は第二楽章読み始めたら止まらない可能性を知っておいた方がいいかも。笑

※この先はお話の内容にしっかり触れたいのでできれば本を読んでからご覧ください。

主人公の樹のリセット癖みたいなところとか、人を信用しようとしないところとか自分と重なって、触られたくないところいじくられるみたいで、いい意味でなんか嫌だわあとなった。

一方でチェロを教えてくれる浅葉先生の人間性や人生にも深みがあって面白い。樹だけじゃなくて、浅葉先生にも自分と重なる部分があって、結構共感しました。

浅葉先生がハンガリーの師のコンクールなんていらない!っていう思想に感銘を受けちゃって、ギリギリになってから日本じゃ通用しないんだと焦る流れも、大事な時こそストレスから逃れようと逆張りしがちな自分ともちょっと重なり。逆張りしようと思ってそうしてるんじゃなくて、その時はそれがいいとなぜか思い込んでしまうんだよね。でもそんな自由な心や人と違っても本当の音楽を求める浅葉先生は間違いなく真の音楽家だし、その葛藤を持ちながらもチェロと向き合う姿が素敵だなとも思った。先生だけど、別に完全じゃない、先生にもまだ先があるところが描かれているのがいいなあと思った。音楽とか芸術ってなんでも終わりがないから、人生もそうだと思うけど、この境地にきたらこれで満足とはならないのよね。浅葉先生は樹からしたら到底真似できない美しい音色を響かせることができるけど、だからこその葛藤もあるんだな。

そんな樹が浅葉先生やミカサのチェロ仲間にであって変わっていく姿もまた自分と重なってちょっぴり元気をもらいました。

大人の趣味との向き合い方も考えさせられた。趣味っていうと遊びみたいに聞こえてしまうけど、大人になると仕事以外は何をしても趣味になってしまう言葉の難しさを感じていて。(子供の頃は将来があるのにね)でも一人一人が真剣に向き合っていれば、そこには趣味という言葉では片付けられない輝きもあるのではないかと思いました。そう信じたい!

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