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聖地誕生

私の「聖地」としてInstagramに投稿した、奈良県桜井市にある長谷寺との出会いをアナザーストーリーとしてここに記しておきたい。

自分なりの「聖地」をいくつかもつことをおすすめしたい。
何かに悩んだとき、迷ったとき。
嬉しいときも悲しいときも。
心の拠り所として帰る場所があると思うだけで、少しほっとする。

縁日

2017年11月18日 午前10時55分。
小雨降る中、近鉄大阪線 長谷寺駅に降り立つ。

降りたのは自分ひとりのみ。人気薄のお寺なのだろうか…とやや不安になる。

生憎のお天気と肌寒さに少し顔をしかめながら小さな改札を通過した。
40Lのバックパックをコインロッカーに押し込み、傘を差すか迷う霧雨の中、平日の参道をぽつぽつと歩き始める。

やがて黄色ののぼりが目に飛び込んできた。

観音さま ご縁日

正直なところ、ちょっと奈良に足を延ばしてみたかっただけで、まさかその日が観音様とのご縁日であることなど知る由もなかった。
「カチッ」
自分の中にある好奇心スイッチが入る音が聴こえた。
「このご縁、大切にしないと。」
直感的にそう思った。

のぼりの下には「初瀬わらしべ物語」と書かれていた。
初瀬はこの町の地名だが、わらしべ物語って?
歩を進めるとその意味が分かった。

民家にかけられた美しい暖簾

有名な昔話「わらしべ長者」は、なんとこの地が舞台なのだそうだ。
物語を綴る絵が民家の暖簾や紙芝居として軒先に展示されていて、
参道全体がまるで美術館。

美術館を独り占めで堪能しているところを想像してみてほしい。
まだ目的地にも辿り着いていないのに、すでに胸がいっぱいになっていた。
( 後日談: 常設展示だと思っていたら、期間限定展示だった。Soooo lucky.)

胸に沁みわたる感情を楽しみながら参道を進んでいくと、お土産屋さんなどの商店が増えてくる。徐々に参拝客も見かけるようになって、少し現実世界に引き戻された。

圧倒的

駅から徒歩15分。長谷寺に到着。参拝入山案内板を一瞥し、一言。
「ひ、広い…!」

399段、上中下の三廊に分かれている

まず、本堂まで続くこの長い登廊に圧倒された。
特徴的な形の吊るし灯籠がまた私好みで嬉しい。
先人たちはこの石段をどんな想いで上がっていったのだろう?
ワクワクしながら一段一段、じっくり上っていく。

ふと目線を上げると、下廊と中廊の踊り場に人だかりができている。
「なんだろう?」
踊り場に到着すると、その理由がすぐ分かった。

境内で撮影会が開かれていたのである。
燃えるような紅葉の赤と、女性が差す和傘の紫にハッとさせられ、しばらく見入ってしまった。
なんと美しく、趣のある場所なんだろう。

情緒ある光景に後ろ髪を引かれつつ、本堂へ続く上廊を上がっていく。
石段を踏みしめる度にどんどん俗世と離れていくような感覚に陥る。
399段の石段を上り切ると、そこには大きなお堂があった。

極付

凛とした空気が流れている。
何もかもが古くて新しく、美しい。鳥肌が立ち、軽く眩暈さえ感じた。
今まで訪れた神社仏閣では味わったことのない感動が駆け巡る。

暫くその場を味わうことに専念した。

少し落ち着いてきて辺りを見回すと、
大きな看板に書かれた文字に目を奪われる。

御本尊大観音特別拝観 受付

んん?え、なになに?

普段は関係者以外立ち入りが禁止されている国宝本堂の中に入る事ができ、観音様のお御足(おみあし)に直接触れてお参り出来ます。

長谷寺 公式webサイトより

え~!?直接触ってお参りできるの??そんなことしていいの??

ここまで至れり尽くせりの感動を味わったのに、極め付けイベント。
春と秋の期間限定特別拝観とのこと。もちろん行かない選択肢はない。
早速本堂にある受付へ。

まず塗香をひとつまみいただき、手に擦り込んでお清めをする。その後、
「こちらは観音様とご縁を結んでいただくための御印です」
と、説明を受けながら"五色線"という腕輪を左の手首にかけてくださる。

この時の五色線は肌身離さず持ち歩きすぎてボロボロに。それも良い思い出。

この儀式、昔からずっと続くものなのだろうか?
さらに身が引き締まり、肌が粟立つ。

いよいよ観音様の御足許へ。

この地に降りて顔をしかめた自分はもはやどこにもいない。
独占状態で相当な時間、観音様と対峙した。
色々な偶然が積み重なってご縁が結ばれるという瞬間を全身で味わったのだった。

以来、年に一度は訪れている。

そして毎回、感謝したいこと、お願いしたいことは必ず聞き入れ、叶えてくださる。
まさに「心願成就」である。

私の「聖地」と言わずして何と言おう。😊

山々にかかる雲の様子とカラフルな木々、そして「第百番 吉」
霧雨で靄がかかる五重塔

この記事を最後まで読んでいただいたのも何かのご縁。是非足を運んでいただき、観音様とご縁を結んでほしい。

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