美しき其の躰

 思い出す、と言うのは相応しくないのだが、やはり貴女を想うと、その時が愛しく恋しく、安らぎであり、高鳴りであった。
 しかし、或いは綻びであり崩怪であり、
また、或いは悦びであり祝福であった。
 それは停滞であり永遠であり継続であり、一つの生であった。

 貴女の紡ぐ揺籃で眠れることがどれほどの幸福だろうか。
それを知ってなお、私は留まれないことを知っていた。
それはもう疾うに切り捨て、諦めた運命であったから。
 その揺籃を引き裂いた私に、与えられるものなどなく、叶えられるものなどなく、貴女を信じる資格すらないのだと。
貴女を見るほどに、背けた現実が私の視線を遮った。

しかしその向こうに確かに居る貴女は、私の中で途絶てえてしまった望みを叶えている貴女は、何よりも美しく、勇ましく、尊く映っている。

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