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【IDと教員研修5】複合的な学習目標と評価設計

前回の記事では,学習目標の5分類を概観しました.あたま,からだ,こころでわけてみると,研修ではいろいろな部分を使って学習を進めているんだなと思います.


複合的な目標の設定

まず,学校を例に考えてみます.授業を構想するための学習指導案であれば,資質・能力の3本柱をもとにして学習目標を設定します.これらは,数時間かけて学習する「単元」として設定されることもあれば,特別な教科 道徳のように,1時間単位で設定されることもあります.いずれにせよ,「内容のまとまり」を意識することが重要です.

では,教員研修には,どのような「内容のまとまり」があるのでしょうか.

例えば,新任の研修主任が行う研修を例にとってみましょう.

研修主任が行う仕事には,「研修ニーズの把握」「研修計画の立案」「研修テーマの設定」「研修評価計画の策定」など,さまざまな業務内容があります.もちろんこれらを全て扱うことは難しいので,重要な部分を抽出したり重点をかけたりして研修をつくります.対象は新任なので,「心構え」のような内容も入れ込む必要が考えられます.

このように挙げた,新任の研修主任に必要な業務内容や心構えを学習目標の5分類に当てはめると,どうなるでしょうか.

一例をもとに考えてみます.
研修ニーズの把握を行うためには,アンケート調査が有効です.Googleフォームを活用して,デジタルアンケートを作成し,ニーズ把握を行うことになったとします.

この時に必要なのは,
Googleフォームの使い方の技能であれば,指示通りのアンケートを作成できるようになったあと,自校の実態に合わせた項目を作成してアンケートを実することが考えられます.
となると,未知の状況に対応する技能として,「知的技能」に該当します.

「心構え」は,「態度」ですね.研修主任として,どんな態度育成をねらうのか,具体的なイメージで学習目標を設定します.

他の項目はどうなるでしょうか.ここでは全てを扱いませんが,いずれかの分類に当てはめることができると思います.

該当に迷うとき,それは評価を考えているとき

「Googleフォームは,そのやり方自体を覚えることがまずは重要だから,その手順を言語化して再生できるようにすることが大切だ」
このように考えると,学習目標には「言語情報」が入ってきます.

つまり,学習目標の分類は,学習内容と厳密に紐づくのではなく,学習者が達成する成果をイメージすることで設定されます.具体的なイメージをすること,それは学習評価を考えることとつながります.

学習指導要領では,指導と評価の一体化の重要性が指摘されています.簡単にまとめるなら,「指導したことを評価しましょう.指導していないことを評価するのは避けましょう」ということです.

例えば,物語文の授業で物語の読み方や主人公に関する解釈を扱ったとします.にも関わらず,単元のテストでは,漢字や語句,文法まで出題されているということがなかったでしょうか.漢字や語句,文法を出すのであれば,それは指導が必要なはずです.「宿題でやってきてね」や「読んだらわかるから大丈夫だよね」では済まされないはずです.

教員研修に戻ります.
研修においても,指導と評価の一体化が重要です.何を指導するのか(研修においては,学習,かもしれません)をもとに評価を考えます.そのため,学習目標は,目標を達成した姿をイメージし,それをどのように評価するのかも踏まえることでより明確に設定できるようになります.

具体的な評価方法を考える

Googleフォームを作成する方法を覚えることをゴールにするのであれば,「言語情報」として,評価方法は,その手順を穴埋め式のテストで確認する,か,再現するといったことが考えられます.
自校の実態に合わせて項目を作成するのであれば,「知的技能」として,問題や課題となる場面を投げかけて,「こんな場合どうしますか?」と習得した技能を未知の場面で発揮できるかどうかを評価することになります.

認知的方略では,自己モニタリングをした様子を観察したレポートなどが考えられます.
運動技能では,技能チェックのテストができそうです.

態度はどうでしょうか.自己評価をしてもらっても,本心かどうかは本人のみぞ知ることとなります.
自己評価以外の方法としては,「気づかれないように観察する」ことや「行為の意図を問う」などがあります(IDの道具箱参照).
「こんな場面であなたはどうしますか」と問い,「なぜそうするのか」を追加で問う.一般的な行為を問うても,一般的な回答しか返ってきませんので,個人的で具体的な場面を複数用意することが重要です.
例えば,研修主任の心構えについて,
「ICT研修を企画提案したが,ベテランの先生が『私はチョークさえあれば十分だから必要ないと思う』と言ってきました.どうします?」といった,(やや過激ですが汗)場面が想定できます.

学習目標について掘り下げていくと,結果,学習指導案と同様,どのような姿をゴールとして描くのかを具体化することになります.
教員研修は大人の学びということもあり,指導要領のような明確な資質・能力が書かれているわけではありません.
だからこそ,柔軟に姿を描き,ニーズを捉えた研修をイメージしてみることが魅力的な計画の第一歩になると考えます.

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