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【IDと教員研修16】広角レンズから焦点化 精緻化理論

前回の記事では,タスク中心型の自律的な学びの方法について考えました.タスクに分解し,見落としをもつことで,自分がゴールに向かってやるべきことが見通せてくる,という内容です.

今回は,タスクをこなしていくとそこには,学びの深まりが出てくるという視点で考えてみます.チャーリー・M・ライゲルースが提唱した,精緻化理論です.

単純なことからはじめて複雑にしていくというプロセス

例えば,鉛筆の使い方を例に考えてみます.
鉛筆でできる単純なこと,それは線を書くということです.
削られたHBの鉛筆で線を書くことができれば,文字を書くということに発展させることができます.

鉛筆には,面をつくる使い方もあります.
横に寝かせて,鉛筆の芯の側面が用紙に当たるように書きます.

線と面は,表したい内容に応じて使いわけます.
文字を書くのであれば,HBだけでも十分でしょう.
文字をしたためる用途であれば,濃淡を意識して鉛筆を選ぶ場合もあるかもしれません.
デッサンするのであれば,硬さや柔らかさを使い分けていく技術と,線と面を自在に組み合わせて陰影やフォルムを整えてかくという使い方を練習する必要があります.

これは,スキルの精緻化といえます.
単純なスキルから始めていき,徐々に複雑なスキルへと高めていくのです.スモールステップをつくるともいえます.
「精緻化」という言葉が表すように,鉛筆であれば,その使い方が高度化されるにつれ,スキルが精巧になったり緻密になったりしていくイメージが湧きます.

〇〇の精緻化でステップや高まり・深まりを捉える

教員研修で考えてみましょう.

指導案の書き方,という技術を習得するとします.
一朝一夕では身につかない,理論と経験の往還が必要なスキルです.

これについて,指導案の細案について,「学習指導要領をもとに,教科の見方・考え方を踏まえたうえで,子供の主体的・対話的で深い学びを実現するための手立てを,学級の実態に応じて書き表す」ということを目指した学習があったとします(果てしない・・・?).

このような場合,
指導案の書き方を単純に捉えていくということは,どんな学習項目が立つでしょう.
単純な書き方から複雑な書き方,というのをイメージするなら,そこにはどのくらいのステップが必要になるでしょう.

巷には,指導案の書き方や,プロの書く指導案というのはたくさんありますので,それをもとにいろいろな方法を考えていくことができそうです.

個別最適な教師の学び,という観点から考えれば,一人一人の教師の学びは異なるという前提で,自らの精緻化を促すような研修も考えられるかもしれません.

全体構成を広角レンズで把握するところから始める

単純なことの積み上げから徐々に複雑にしてく,というプロセスを経るとき,精緻化理論では,「全体構成を把握する」ことが大切です.
範囲をつかむ,という言い方もできるかもしれません.

鉛筆の例であれば,デッサンに必要な技術として熟達化するというイメージをつかんでから練習をするということになります.
指導案の例であれば,任意の条件を踏まえた内容の指導案を書くための方略を高めるというイメージをつかんでから書くということになります.

裏を返せば,闇雲に進めても精緻化は難しい,ともいえます.

精緻化までのステップや道筋をえがく

「精緻化」という言葉は,例えば「たくさんのことを学んだので,自分の知識が精緻化できるように整理します」という言い方もします.この場合は,知識のパーツを並び替えたり,単純な項目で分解したりして,つながりを確認したり関係性を見つけ出したりするということになります.

ひとえに精緻化といっても,いろいろな方法が考えられるようです.
教員研修においても,授業技術の精緻化・生徒指導技術の精緻化など,習得させたい内容によっても道筋はさまざまありそうです.

最初は,研修の中で例を示しながら,次第に自らが精緻化のステップを考えられるようにしていくことが研修で肝要になりそうです.

学びの精緻化,一言で示すことはできても,学習内容によって,高まりや深まりを得ていくことは困難かもしれません.特に,学びを進める際には,失敗や困難さの克服など,試行錯誤する経験が欠かせません.
次回は,存分に失敗を許容しながら学ぶことのできる(?)GBS理論について考えていきましょう.

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