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さがしもの

ドアを開くと、古本屋の、あの独特のにおいがする。数日前の雨を残したような、静寂に活字が沈み込んだような、あのなじみ深いにおい。

角田光代『さがしもの』p.20

明日からまた生活がまわりはじめる。仕事の合間、電話の鳴り響く広いフロアで、洗濯ものの山になったあの部屋で、タイのちいさな島の、海沿いのバンガローにある一冊の文庫本に彼は思いを馳せる。まるでもうひとりの自分が今もそこにいるような気分を、つかの間彼は味わう。

同上p.35

ねえ、いがみあってたら最後の日まで人はいがみあってたほうがいいんだ、許せないところがあったら最後まで許すべきじゃないんだ、だってそれがその人とその人の関係だろう。相手が死のうが何しようが、むかつくことはむかつくって言ったほうがいいんだ。

同上p.180



中学生の頃に読もうとしたけどあまり入ってこなかった本を、7年越しに実家の本棚で見つけて一気読みした

ずっと待っていてくれたみたいで不思議

比較的漢字がひらかれていて、呼吸をするように楽に入ってくる文章に惹かれます

本が好き、言葉が好き、文章が好き🥛

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