乾燥しいたけ

乾燥しいたけ、スヌーピーのキーホルダー、映画館までのバス、進撃の巨人、モスバーガー、本屋さん、英検3級、缶のコーラ。

突然ですが、私には愛してやまない恋人がいます。
この人がずっと私のことを好きだったらいいのになんてのは当たり前で、毎時間手を繋いでいても、抱きしめていても苦ではないほどです。実家にいる犬に抱く感情に近いものがあります。

最近読んだ本の中に『犬は愛の形をしている』という一文がありました。確かに。私は犬が大好きです。愛しています。でももし、私が小説家だったとして、愛の形は？と問われると彼だ、と答えるだろう、そう思いました。

先日、そんな彼と晩御飯を食べながらテレビを見ていると、しいたけを使った料理特集が流れてきました。私は彼に『しいたけって嫌いな人多いよね。』と唐突に尋ねました。彼は『俺は好き、美味しいよね、好き？』と返してきました。なんてことない会話ですが、この時の私は、胸の苦しさに耐えながら、ご飯をかきこんでいました。
今から数年前、中学生の頃、調理実習で何かの汁？を作る機会があって、それには乾燥しいたけが。乾燥しいたけって、水で戻すじゃないですか？乾燥しいたけの戻される前(つまり乾燥しいたけ)って見たことありますか？私は、料理をするのが好きだったので、目にしたことがあったんですね、それを水で戻すことを知ってたんです。なので当たり前のように作業していたんですね。でも横からひょこっと、

『それ何？？なんの塊？虫？』とありえんことを聞いてくる人がいたんです。

『いや、乾燥しいたけよ。椎茸ね。水で戻して使うんよ。』

『へ〜....初めて見た。』

『しいたけ、嫌い？』

しいたけ嫌いの人って結構多いですよね。(トースターで丸々1個焼いたものに、すだちとお醤油をかけたそれが私は大好きなのですが。)周りの友人もしいたけは入れないで！臭い！きもい！などと酷い言いようで、(おぉ、、、かわいそうに罪なき椎茸よ。私が食べてやるからね)と水の中に落としていました。

それもね、なんてことない質問だったんです。

『いい天気ですね〜』みたいな、『おはよ〜』みたいな。会話の流れで。社交辞令みたいな感覚で聞いたんです。

『好き！』

ってたった一言、しかもめっちゃ笑顔で。
ものすんごい破壊力でした。

猪木ボンバイエ。
おもちゃ欲しがる5歳児の地団駄。
ムシキングするときのボタンの連打。
タンスの角で小指打った時のアレ。
そんな感じ。

そのあとの自分が、何て言葉を返したか覚えてませんが、彼は、乾燥しいたけが生き返るのを隣でずっと見ていて、私はその間、じっと息を止めていたことだけ覚えています。

そんなことを思い出した先日。

私だけだろうな、これを覚えているのは。ってちょっと寂しいような、安心したような気持ちになって、秋になったらしいたけ買ってこよう、とか思って。で、なんとなく横目で彼を見るとニヤニヤと笑ってました。

(覚えてんな、コノヤロー。)