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【人が怖い実話9】元日本記録保持者の男

40代の男性A君から伺った話。

彼とは怪談収集目的で出会ったわけではなく、もともとの知人である。本話は、彼が酒の席で零したエピソードだ。


A君は公立高校時代にあるスポーツに打ち込んでおり、Xという男性教諭から指導を受けていた。

小柄だが色黒で精悍な面構えのX氏は当時30代で、その競技の元日本記録保持者だ。Wikipediaにも掲載されている。地元の高校生競技者にとっては神のような存在であった。

あるとき、遠征のためA君はX氏、別の高校の教諭Y氏と3人で遠方に移動したことがあった。Y氏は、X氏の大学の後輩だ。同じ競技をしていたこともあり、懇意の仲である。

遠征の帰り、2段ベッド型の寝台列車でのこと。

深夜。

A君は、ベッドの2段目で横に臥していた。1段目にはX氏とY氏が座り、晩酌をしているようだった(下記イメージ写真参照)。

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遠征の疲れがあるものの、大柄な体躯に狭いベッドが窮屈なうえ、がたんごとんと揺れる環境ではなかなか寝付けず、入眠してもすぐに目が覚めてしまう状況だった。

なので、自分の真下にいる、ふたりの教諭の会話が耳に入ってくる。X氏が何やら熱く語っているのをY氏が聞いている(聞かされている)様子だ。

X氏は、お酒も入っているのと、大学の後輩Y氏が話相手だったため、すこぶる饒舌だったという。


「Bは可愛いよなぁ」

「どうにか、やりてぇんだけどな」

「Cは、スタイルが抜群だわ」

「Dとは、キスまでいったぞ。(Dの)試合の前日に」


会話中に出てくる名前は、同じ部内の女子生徒や、X氏の過去の教え子の名前であった。その競技では名の知れた実力者の生徒ばかりである。

これ以上しゃべらせるとマズいと感じたのか、聞き役のY教諭は、まあまあそのくらいにしてもう休みましょう、と焦りながら就寝を促していた。


A君は、何も聞かなかったことにした。

その後、X氏の指導のおかげで、めきめきと実力を伸ばして遂にはインターハイで上位に食い込むまでに至った。


「全国クラスの試合だと、女子選手1人とX先生だけで遠征に行くこともある。ふたりきりになる機会も多いよ。おそらく、キス以上の行為もしてたんじゃないかな。何人も……」

複雑そうな表情を浮かべながら、A君はビールを呷った。


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